Ops
セールスオペレーション(Sales Ops)とは?営業強化に欠かせないSales Opsが担う役割や必須スキル、導入に向けた6つのステップなどを詳しく解説
近年、インサイドセールスやセールステックツールの浸透により、営業のあり方は大きく変化しています。この変化の中で、セールスオペレーション(Sales Ops)は非常に重要な役割を果たしています。
この記事では、セールスオペレーション(Sales Ops)の担う役割や導入に向けたステップなどについて詳しく解説します。
セールスオペレーション(Sales Ops)とは?
セールスオペレーション(Sales Ops)とは、営業部門の能力を最大化させるためのさまざまな戦略と実行を統合する概念です。企業によって仕事の範囲に多少の違いはありますが、一般的には営業部門の包括的な支援を提供する部門として位置付けられています。
この役割は、日本においては「営業企画」や「営業推進」の概念に近いと考えられます。日本ではまだマイナーなポジションかもしれませんが、アメリカでは比較的注目されている重要な役割として認識されています。
セールスオペレーションの業務範囲としては、リードの管理、営業戦略の策定、テリトリーの構成と調整、セールスプロセスの最適化、報酬プランの策定、セールスオートメーションツールの運用、トレーニングの実施、データの分析と報告など、営業に関わる広い範囲を担当します。すなわち、これは営業の高次な領域を担うということを意味しています。
企業によっては、セールスオペレーションが独立した部門として存在する場合もあれば、大規模な企業では「レベニューオペレーション(RevOps)」の一部として組み込まれることもあります。
セールスオペレーションが担う主な役割には、セールスプロセスの効率化、データ分析に基づく洞察の提供、マーケティングやカスタマーサービス部門との連携強化などが含まれます。セールスオペレーションの設立は、営業現場の支援を強化し、結果として収益の向上が期待されています。
セールスオペレーション(Sales Ops)の重要性とその背景
セールスオペレーションが急速に注目されるようになった背景には、主に以下の5つのトレンドが影響しています。
- エンタープライズ・テクノロジーの進化
特にSaaS(Software as a Service)ツールの普及が大きな影響を与えています。 - CRM(Customer Relationship Management)システムの普及
顧客関係管理が重要視されるようになりました。 - マーケティングオートメーションの進展
デジタルマーケティングの自動化が営業効率を高めています。 - BtoBコミュニケーションツール(例:Slack)の普及
これにより、チーム間のコミュニケーションが効率化されました。 - データ分析の重要性の高まり
データに基づいた意思決定がビジネスに不可欠となっています。
これらのトレンドは、営業担当者に対して顧客ごとに異なるコミュニケーションツールの習熟、CRMやSFA(Sales Force Automation)の活用、データに基づいた行動管理など、多岐にわたるスキルを要求しています。しかし、全ての営業担当者がこれらを完璧にこなすことは困難です。
このような状況の中で、営業担当者を営業に集中させ、生産性を高めるために、セールスオペレーションおよびセールスイネーブルメントなどの組織への注目が高まっています。これらの組織は、営業現場を支援し、営業プロセスを効率化することで、最終的に企業の収益向上に貢献しています。
セールスオペレーションとセールスイネーブルメントの違い
セールスオペレーションと似た言葉に、セールスイネーブルメントがあります。これらはどちらも近年のビジネス環境の変化に伴い、営業成果を最大化するという共通の目的を持つ重要な概念です。企業によっては、これらを同一視することもありますが、一般的には以下のように区別されます。
- セールスオペレーション
セールスチームが現在行っていることや過去の活動に焦点を当て、データ分析に基づく改善策を提案します。
主に営業戦略構築、販売地域の計画とアカウントの割り当て、提案と契約の管理、販売報酬とインセンティブ、売上げ予測とレポート、CRMやデータシステムの管理などを担当します。
- セールスイネーブルメント
セールスオペレーションで決定された事項を実行し、展開します。
これには、営業スタッフのトレーニング、営業プロセスの円滑化、実績データの報告、営業スタッフとのコミュニケーション、リードジェネレーション領域の支援、コンテンツの作成と共有などが含まれます。
これらの役割の区別は、企業によって異なることがあります。また、人的リソースの制約から両部門を一つの部門に統合する選択をする場合もあります。しかし、両部門が存在する場合は、役割分担を明確にすることが重要です。
セールスオペレーションは、主に戦略面やシステム管理に重点を置き、営業の効率化や成果を最大化するための基盤を構築します。一方で、セールスイネーブルメントは、その基盤を活用して営業チームが実際に成果を出せるように支援し、実務面での強化を図ります。このように、両者は互いに補完し合う関係にあり、共に営業部門の成功に寄与します。
セールスオペレーション(Sales Ops)導入のメリット
セールスオペレーションの導入は、企業にとって多くの利点をもたらします。特に以下の3つの効果は、セールスオペレーションの導入によって実現可能です。
- 顧客データ活用の定着
- 営業の効率化
- 属人化しない営業活動の実現
顧客データ活用の定着
セールスチームだけでなく、事業企画やカスタマーサクセスなどの他部門と連携することで、ビジネス全体のバランスを考慮した上で、実用的なセールスツールの運用が可能になります。
これにより、顧客データをより効果的に活用し、ビジネス戦略の策定に役立てることができます。
営業の効率化
セールスオペレーションによって、データ収集と分析が緻密に行われるようになります。
確度の高いターゲットへの営業活動に集中することで、最小限のコストと労力で最大の成果を上げることが可能になります。
これは生産性の向上と企業全体の売上アップに直結します。
属人化しない営業活動の実現
「勘」や「根性」といった主観的な部分をセールステックツールを用いて客観的なデータとして蓄積し、可視化することができます。
これにより、成果を出す営業プロセスや失注のパターン、効果的な営業ノウハウが共有され、組織全体の営業力が向上します。
新入社員や営業スキルの未熟な中途社員も早期に戦力化できる可能性が高まります。
セールスオペレーション(Sales Ops)が担う役割
セールスオペレーションチームは幅広い業務領域を担います。ここでは、主な役割である以下の4点について解説します。
- 戦略の立案
- テクノロジーの活用
- オペレーションの構築
- パフォーマンスの管理
戦略の立案
セールスオペレーションの中核をなすのは、戦略的な機能です。これは、営業部隊の戦略、計画、目標、目的の評価、そして営業部隊とテリトリーのサイジング、構造化、調整を最適化するための専門知識の提供に焦点を当てています。
具体的には、以下のような重要な要素が含まれます。
- 営業戦略の構築、計画、目標設定
企業の全体戦略に合わせた営業戦略の策定。
中長期的な目標設定と計画の策定を通じて、営業部門の方向性を明確にします。
- セールスプロセスの最適化
効率的かつ効果的なセールスプロセスの設計と実装。
営業活動の各段階における最適なプロセスを特定し、それを元に業務フローを改善します。
- セールスカバレッジモデルとテリトリープランニング
市場と顧客の特性に基づいたテリトリー割り当てとセールスカバレッジモデルの開発。
効率的なリソース配分と市場カバレッジを実現し、営業効率を最大化します。
- プレゼンテーション、レポート提出(対経営陣、取締役会)
経営陣や取締役会への戦略的なプレゼンテーションとレポート提出。
営業成果や戦略の進捗を定期的に報告し、経営層との連携を強化します。
テクノロジーの活用と管理
近年、企業が利用できるSaaSアプリケーションやセールス系ツールの数は急速に増加しています。しかし、これらのテクノロジーが必ずしも使いやすいわけではなく、操作の習得やデータ入力には時間がかかることも事実です。特に初期のセールステクノロジーに対する満足度は低かったという現実もあります。
セールスオペレーションにおける重要な役割の一つは、このセールステクノロジーの管理です。セールスオペレーションチームは、自社に最適なITツールを選択し、営業担当者に対するトレーニングを行い、その運用を管理することが求められます。
このような役割を担うことで、セールスチームは収益に直接結びつかない業務の時間を削減し、より多くの時間を顧客との関係構築に費やすことが可能になります。適切なテクノロジーの活用により、営業活動のタイミングが改善され、結果として確実に業績を上げることが目指されます。
セールステクノロジー管理には以下のような活動が含まれます。
- セールステクノロジーの評価
市場に存在する様々なツールの機能と性能を評価し、自社のニーズに合ったものを選択します。
- アプリやツールの統合
異なるツール間の連携を確保し、効率的なデータフローを実現します。
- CRMの導入とカスタマイズ
顧客関係管理のためのシステムを導入し、企業の特定のニーズに合わせてカスタマイズします。
- データ管理とレポート
重要な営業データを管理し、分析結果をレポートとして提出します。
- 営業タスクの自動化
繰り返し行われる営業活動を自動化し、営業担当者の作業負担を軽減します。
- テクノロジーの更新と営業担当者のトレーニング
最新のテクノロジーを追跡し、営業チームがこれらを効果的に利用できるようにトレーニングを提供します。
オペレーションの構築
セールスオペレーションにおけるオペレーショナルな業務は、日々の営業活動の核となる多岐にわたる活動を含んでいます。これらの業務は、営業部門の効率的な運営と効果的な成果達成に不可欠です。
具体的には、以下のような重要な領域が含まれます。
- 日々の営業部門の実績の分析と報告
定期的な営業成果の分析を行い、その結果を報告します。この分析は、営業戦略の改善や将来の計画立案に役立てられます。
- テリトリーの調整
営業領域の効率的な割り当てと調整を行います。
マーケットの変化や企業の戦略に応じて、テリトリープランを最適化します。
- 他部門とのコミュニケーション
営業部門と他の部署(例:マーケティング、製品開発)との連携を強化します。
組織内での情報共有と協力を促進します。
- 製品トレーニングとセールストレーニング
営業チームに対する製品知識と営業スキルの向上を図るトレーニングを提供します。効果的な販売方法と製品知識の習得に焦点を当てます。
- 優秀な人材の採用とオンボーディング
トップパフォーマーの採用と新入社員の研修プログラムを担当します。
新しい営業担当者が迅速に職務に適応し、貢献できるようにサポートします。
- 契約とSLA(サービスレベルアグリーメント)の管理
顧客との契約やSLAの交渉と管理を行います。法的要件の遵守と顧客の期待の満足を確保します。
- 知識管理(KBマネジメント)
重要な情報やベストプラクティスの文書化、共有、更新を行います。
効率的な情報共有により、組織全体の知識ベースを強化します。
パフォーマンスの管理と向上
セールスオペレーションチームは、営業部門の管理と運営業務を効率化し、営業チーム全体のパフォーマンスと専門性を高める重要な役割を果たします。
具体的には、以下のような重要な領域が含まれます。
- 営業方法論とベストプラクティスの導入
効果的な営業手法と業界のベストプラクティスを導入し、営業チームの知識とスキルを向上させます。これにより、営業活動の効率性と成功率が高まります。
- KPIと販売指標の特定
営業チームのパフォーマンスを測定するための重要な指標を設定します。
これらの指標は、目標達成の進捗を追跡し、必要な改善策を講じるための基礎となります。
- 報酬とインセンティブプラン
効果的な報酬体系とインセンティブプログラムを設計し、営業チームのモチベーションを高めます。
チームメンバーの成果と努力を適切に評価し、報酬することで、さらなる成果の創出を促進します。
- リードマネジメント
顧客リードの管理と追跡を行い、効果的なリード変換戦略を策定します。
優先順位の高いリードに焦点を合わせ、営業チームの効率を最大化します。
- 四半期ごとの営業インセンティブ報酬プランと目標設定プロセスの管理
定期的に目標を設定し、達成に向けたインセンティブプログラムを管理します。
これにより、営業チームの目標に対する一貫性と集中力が向上します。
セールスオペレーション(Sales Ops)に求められる4つのスキル
続いて、セールスオペレーションに求められる4つのスキルについて解説します。
営業活動の経験と理解
この部門で特に重要視されるのが、実際の営業活動の経験と深い理解です。なぜなら、営業経験者やマーケティング経験者は、実際の現場知識を持ち合わせており、その知見を活かしてデータ分析やプロジェクトマネジメントスキルを駆使することで、営業チームを効果的にサポートし、組織全体の成果に大きく貢献できるからです。
具体的には、営業経験者は、自社の製品やサービスが市場でどのように機能するか、また顧客のニーズや挑戦が何であるかを深く理解しています。これにより、営業現場のニーズに合わせた戦略的なサポートや、営業プロセスの最適化に対する具体的な提案を行うことが可能になります。また、マーケティング経験者は、市場の動向や顧客の行動パターンを把握しているため、マーケティング戦略と営業活動を効果的に組み合わせる提案ができます。
重要なのは、営業の文脈や現場の勘所を理解することです。営業活動の全体の流れを理解していないと、営業現場とのコミュニケーションにおいて信頼を得ることが難しくなります。また、どのようなツールや変革が営業活動をアシストし、成果を向上させるのかという現実的な判断が求められるため、現場経験が豊富な者がその役割を果たすのに最適です。
さらに、市場の変化に敏感であることも重要です。例えば、顧客の購買行動が変化し、従来の営業手法が有効でなくなると、セールスオペレーションチームは新しい提案や戦略を営業チームに提供する必要があります。これにより、組織は変化する市場環境に迅速に対応し、競争上の優位を保つことが可能になります。
セールス・マーケティングツールへの理解
セールスオペレーションチームは、セールスツールを理解するのはもちろんのこと、営業の前段階であるマーケティングのツールへの理解も必要不可欠です。
セールスオペレーションチームにおいては、セールスとマーケティングの間で情報の断絶が起こらないように、両部門の連携を促進するツールの選択と運用が重要になります。これには、自社のITリテラシーと具体的な課題を考慮に入れた上で、最適なツールを選定する能力も求められます。
具体的なツールには、マーケティングオートメーション、CRM(顧客関係管理)、営業支援システム、タスク自動化ツール、コラボレーションツールなどが含まれます。これらのツールを理解し、効果的に活用することで、セールスプロセス全体の効率化と成果の向上が期待できます。
例えば、マーケティングオートメーションツールを使用することで、リード生成や顧客エンゲージメントを自動化し、効果的なマーケティングキャンペーンの管理が可能になります。CRMシステムは、顧客情報の一元管理と分析を可能にし、個々の顧客に合わせたカスタマイズされた営業戦略を策定するための基盤を提供します。また、営業支援システムやタスク自動化ツールを活用することで、営業担当者の作業負担を軽減し、より重要な顧客対応に集中できるようになります。
さらに、これらのツールの選択にあたっては、将来的なデータ連携の可能性や現在のチームのITリテラシーを考慮することが重要です。適切なツールの導入に加え、チームメンバーへのトレーニングを行うことで、ツールの活用効果を最大化し、組織全体の成果に貢献できます。
データ分析力
セールスオペレーションチームにとって、データ分析力は今日のビジネス環境において最も重要なスキルの一つとなっています。このチームは、営業活動に関わるほぼすべてのデータ分析をサポートし、組織全体の成果向上に貢献します。
データ分析は、営業担当者が時間をどのように活用しているか、顧客にどれだけの生涯価値を提供しているか、またロイヤル顧客の傾向や営業担当者の離職率など、多岐にわたる領域をカバーします。これらのデータを解析し、洞察を得ることによって、営業チームの効率と効果を最大化する戦略を策定することが可能になります。
例えば、営業担当者の活動パターンを分析することで、時間管理の最適化や効率的な顧客対応方法を特定できます。また、顧客データの分析によって、高い生涯価値を持つ顧客群を特定し、それらに対するマーケティングと営業の戦略をカスタマイズできます。さらに、営業担当者の離職率やその原因を分析することで、職場環境の改善やより効果的な人材育成のアプローチを開発することも可能です。
データ分析の能力は、単に数字を理解することを超え、それらのデータから有益な洞察を引き出し、具体的な行動計画に変換する力を意味します。これにより、セールスオペレーションチームは、組織の成長を加速し、競争優位を築くための戦略的な決定を支援できるようになります。
プロジェクトマネジメント能力
セールスオペレーションチームは、企業内の複数の部署を統合し、様々なプロジェクトを推進する核となる部署です。この部署の成功には、強力なプロジェクトマネジメント能力が不可欠です。例えば、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなどの部門との連携をスムーズに進め、時には法務やIT部門との折衝も行う必要があります。
プロジェクトマネジメント能力とは、各部門の意見をヒアリングしながら、部署間のコミュニケーションを円滑にし、プロジェクトを効率的に進める能力を指します。これには、明確なゴールの設定、各部署の役割の明確化、プロジェクトの意図や変革の理解の促進が含まれます。
また、プロジェクトを成功に導くためには、必要な人材、ツール、予算の管理と最適化が求められます。問題が発生した場合には、迅速な対応と解決策の提案が重要です。
セールスオペレーションチームを構成する際には、それぞれの領域を得意とする複数のメンバーが必要になります。スタッフレベルの人材では、営業経験者が現場への理解があり、現実的な判断を下すことができます。さらに、マーケティング知識や新しいツール、データ分析手法に対する興味と学習意欲も重要な要素です。
セールスオペレーション(Sales Ops)を導入する6つのステップ
ここでは、セールスオペレーションを自社に導入する際の6つのステップについて紹介します。
すでに「営業企画」や「営業推進」として部門がある場合は、データ分析やITツールの運用など不足している領域に関してその部門を強化する、またはその部門と領域の重複がないセールスオペレーションチームを立ち上げるようにすると、比較的軋轢なく導入できるでしょう。
STEP1:企業と営業組織のあるべき姿の明確化
セールスオペレーション(の導入において、最初のステップは自社の営業組織の理想像を描くことから始まります。企業の文化やビジネスモデルによって最適な営業組織の形は異なり、その理想像を明確にすることが成功の鍵です。
例えば、製品の開発力を武器にする企業では、細かいタスク管理に基づく効率的なオペレーションが効果的です。一方で、営業担当者に大きな裁量を与え、モチベーションを高く保つアプローチもあります。SaaS業界では役割ごとに分類された「The Model型」が成功しています。また、パートナー企業との連携によってインバウンドとアウトバウンドの両方で成果を出す方法も効果的です。
企業にとって最適な営業組織は、製品の特性や社員数によって異なります。現状の課題やリソースを把握した上で、理想の営業組織像を描くことが重要です。
セールスオペレーションチームの位置づけも企業規模によって異なります。小規模な企業ではCEOやCOOが兼任する形式が適している場合もありますし、中堅企業では独立したセールスオペレーションチームを設立し、専任の責任者とチームを編成することが適切です。
セールスオペレーションの導入においては、まずは自社にとって最適な営業組織の形を描き、それを実現するための組織体制を構築することがスタートラインとなります。この基盤の上に、セールスオペレーションの戦略が築かれるのです。
STEP2:オペレーションにおける問題の明確化
セールスオペレーション導入の二歩目は、現在のオペレーションにおける問題点の明確化です。理想の営業組織と現実のギャップを正確に理解することが、効果的な改善計画の策定に不可欠です。
問題の特定には、まず以下の領域ごとに課題をリストアップしてみましょう。
- 戦略
現行の営業戦略の有効性を評価し、市場や顧客の変化に適応しているかを検証します。
- 人材(能力、数)
営業チームのスキルセット、能力、人員の適正数を評価し、ギャップを特定します。
- 営業プロセス
営業プロセスの効率性と効果性を分析し、ボトルネックや非効率なプロセスを特定します。
- セールステック
使用しているセールステクノロジーの有効性を検証し、必要な改善点を見つけます。
- 組織(体制、カルチャー)
組織の構造や文化が営業チームのパフォーマンスに与える影響を評価します。
課題の特定の後は、現状の課題を深く理解し、原因を明らかにすることが重要です。これには、データ分析、従業員へのインタビュー、市場調査などが有効です。特定された課題から、最も影響が大きいものや緊急性の高いものに優先的に取り組むことが重要です。
STEP3:対策の検討
セールスオペレーションの導入において、営業戦略の転換やオペレーション上の課題の特定と対策は重要な要素です。たとえば、従来のテレアポ営業からコンテンツマーケティングへの転換を考えている場合、専任のマーケティング担当者の確保が不可欠です。この場合、適切な人材が既に社内にいなければ、新たに採用するか、社内で育成する必要があります。
さらに、オペレーション上の課題にも目を向ける必要があります。例えば、営業担当者がSFA(Sales Force Automation)ツールにデータを入力しない、マーケティングとセールスの連携が取れていない、リードジェネレーションが不十分など、様々な問題が生じる可能性があります。
これらの課題の原因を特定するためには、以下のような観点が有効です。
- ツールの適合性
使用しているツールが営業担当者のニーズや業務スタイルに合っているかを評価します。 - ツールの理解
営業担当者がツールを十分に理解しているかどうかを確認し、必要に応じてトレーニングを実施します。 - 組織文化
営業チームの文化や慣行がツール使用や新しいプロセスの採用を阻害していないかを検討します。
これらの原因を明確にした後、具体的な対策を立てます。
例えば、ツールがミスマッチであれば、より適切なツールへの変更やカスタマイズを検討し、営業担当者の理解を深めるためのトレーニングプログラムを実施します。また、組織文化の問題であれば、経営層からのコミュニケーションを強化し、営業チームの意識改革を図ります。
STEP4:実施事項の細分化
セールスオペレーションの改善に向けた具体的な対策が決定したら、実行に移すための詳細なアクションプランを策定することが重要です。目的は、効率的な実行計画を立て、成功に向けた明確な道筋を描くことです。
例えば、「営業外の業務をいかに減らすか」という視点での対策として以下のようなアクションが考えられます。
- 営業ワークフローの見直し
現在の営業プロセスを分析し、非効率な部分を特定します。その後、プロセスを簡素化し、効率的なワークフローを設計します。
- 営業事務アシスタントの増員
管理業務の負担を軽減するため、追加の営業事務アシスタントを採用します。
- 現場のリテラシーに合ったツールの選択
営業チームのITリテラシーに合わせて、使いやすく効果的な営業支援ツールを選定します。
- 米国のSFA運用スタイルの導入
入力されていない案件を成果に反映させない仕組みを導入し、SFAツールの利用を促進します。
これらのアクションを具体的なタスクに分解し、それぞれのタスクに対して実施する時系列、担当者、必要なリソース、想定される所要時間を明記します。タスクを細分化し、詳細なリストを作成することで、プロジェクトの進行管理が容易になります。
また、計画にはある程度の柔軟性を持たせ、予期せぬ障害や遅延に対応できるようにします。計画の進行状況を定期的に確認し、必要に応じて調整を行うことも重要です。
STEP5:成果指標と測定方法の決定
セールスオペレーションの導入や改善において、成果をどのように測定するかは、その成功を評価する上で非常に重要です。適切な成果指標の設定と測定方法の確立は、セールスオペレーションの効果を明確にし、今後の戦略策定に役立ちます。
営業プロセスの見直しやパイプラインの変革を行った場合、以下のような指標を定期的にトラックすることが有効です。
- コンバージョン率と成約率
リードがどの程度の割合で顧客に変換されているかを測定します。
- 販売サイクルの長さ
リード生成から成約までの平均時間を測定し、プロセスの効率化を評価します。
- 生成された新規リード数
新たに獲得した潜在顧客の数を追跡します。
- 営業チームの収益成長率
営業チームの収益がどれだけ成長したかを測定します。
- 平均取引サイズ
成約された各取引の平均金額を追跡します。
- 平均販売時間
営業活動に費やされた時間の平均を測定します。
- 顧客獲得コスト (CAC)
新しい顧客を獲得するために費やされた平均コストを計算します。
- ライフタイムバリュー (LTV)
顧客がもたらす平均的な利益の総額を推定します。
- 顧客維持率
- 既存の顧客がどれだけ継続しているかを測定します。
新しいテクノロジー導入やトレーニングの効果を測定する場合、以下の指標も重要です。
- ツールの活用率
例えばCRMシステムのデータ活用率などを測定します。 - 新しいテクノロジーに対する満足度調査
導入されたツールや技術に対する営業チームの満足度を評価します。
これらの指標を定期的に測定し、セールスオペレーションの改善効果を評価することで、組織の成長と収益性の向上につながる戦略的な改善点を見つけることができます。また、これらのデータは、セールスオペレーションのさらなる改善に向けた貴重なフィードバックとなるでしょう。
STEP6:運用ルールの決定
セールスオペレーション部門の継続的な運用には、組織内での明確なルールとガイドラインの設定が不可欠です。これにより、複数の部門間での連携がスムーズになり、効率的な業務運営が可能になります。
まず重要なのは、セールスオペレーションチームのミッションを明確に定義し、組織内で共有することです。これには、セールスオペレーションチームと営業部門、さらにマーケティングやカスタマーサクセスなどの関連部門の役割も含まれます。各部門の役割を明確にすることで、それぞれが期待される成果と責任範囲を理解しやすくなります。
また、部門間でのサービスレベルアグリーメント(SLA)を締結することも効果的です。これにより、各部門間のコミュニケーションや業務遂行に関する基準が設定され、期待管理がしやすくなります。
コミュニケーション手段のルール定義や定期ミーティングの設定も重要です。これにより、各部門が情報を共有し、連携を深める機会が増え、組織全体の調和と効率が向上します。
新しいセールスオペレーションチームを立ち上げる際は、その目的と目指すべき方向性を明確にし、適切な人材を配置することが重要です。営業で成果を上げてきた優秀なマネージャーや、ITオペレーションに強い若手を抜擢し、育成することで、部門の強固な基盤を築くことができます。
セールスオペレーションチームの立ち上げと運用には、目的の明確化、適切な人材の配置、組織内ルールの設定が鍵となります。これらを適切に行うことで、セールスオペレーションは企業の営業効率化と成果の向上に大きく貢献することができるでしょう。
セールスオペレーション(Sales Ops)チームの構成について
セールスオペレーションを企業組織の中でどのように位置づけるかは、企業の規模や成長フェーズ、現在の営業体制などによって異なります。
ここでは、セールスオペレーションを組織図にどのように組み込むかについて、2つの異なるアプローチを紹介します。
営業VPの直下にセールスオペレーションを置くアプローチ
このパターンでは、セールスオペレーションは営業部門のトップ、すなわち営業VPの直下に位置します。
すべての営業関連の人材が営業VPの指揮下にあることになり、営業の効率化や戦略策定を一元的に管理することが可能です。
日本の企業で営業部門が強い影響力を持つ場合に適しています。
セールスとマーケティングのトップの下での並列配置
セールス、セールスオペレーション、マーケティングが同じレベルで配置されます。
この組織構造は、セールスとマーケティングの密接な連携を強化し、各部門間の情報共有と協力を促進します。
営業部門だけでなく、マーケティング部門も重要な役割を果たす企業に適しています。
日本の企業では、トップダウンでの大規模な組織変革が難しい場合もあります。そのため、小規模企業ではCEOがセールスオペレーションの責任者となり、ITリテラシーを持つ営業経験者やマーケティング経験者をサポート役に置く構成が有効です。
また、既存の営業支援部門を軸にセールスオペレーションを組み込むことで、比較的スムーズに導入を進めることができます。どのアプローチを採用するかは、企業の現状と目指すべき方向性によって決まります。重要なのは、セールスオペレーションが企業の営業効率化と成長に貢献できるような組織構造を選択することです。
セールスオペレーション(Sales Ops)で成果を出すためのツール例
セールスオペレーションで成果を上げるためには、適切なツールの選定と活用が不可欠です。主要なツールとしては、マーケティングオートメーション(MA)、セールスフォースオートメーション(SFA)、顧客関係管理(CRM)があり、これらはセールスプロセスの異なる段階で重要な役割を果たします。
マーケティングオートメーション(MA)
マーケティングオートメーション(MA)は、デジタルマーケティング活動を効率化し、効果を最大化するための強力なツールです。MAはオンラインでのリードジェネレーションを自動化し、有望な見込み客を効率的に絞り込むことが可能になります。
MAを導入することで、マーケティングプロセス全体が一元化され、マーケティングチームの効率が大幅に向上します。さらに、営業チームに有益な情報を提供し、売上の増加に直結する機会を創出します。
セールスフォースオートメーション(SFA)
SFA(Sales Force Automation)は、営業プロセスを効率化し、生産性を高めるために設計された営業支援システムです。このシステムは1990年代半ばに登場し、営業活動全体、特に新規顧客のアプローチから商談に至るまでのプロセスを支援することを目的としています。
具体的には、属人化しがちな顧客情報や案件情報をシステム上で一元管理することにより、営業プロセス全体の透明性と追跡可能性を高める役割を担っています。
顧客関係管理(CRM)
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客との関係を効果的に管理し、最適化するためのシステムです。CRMの目的は、顧客データを中心にしたアプローチを通じて、顧客満足度を高め、長期的な顧客関係を築くことにあります。
CRMシステムの導入により、企業は顧客中心のビジネス戦略を実行し、長期的な競争優位を築くことが可能になります。CRMは、顧客との関係を深化させ、持続的な成長と収益性の向上に寄与する重要なビジネスツールです。
まとめ
セールスオペレーション(Sales Ops)は、今日のデータ駆動型のビジネス環境において、企業の営業効率化と成果向上に不可欠な役割を果たしています。本記事では、セールスオペレーションの担う役割や必要なスキル、導入のメリットや導入に向けたステップ、組織内での位置づけなどについて詳しく解説しました。
最後に、クロス・オペレーショングループは、営業・カスタマーサクセス・カスタマーサポートのオペレーション構築・効率化に向けたコンサルティングサービスを提供しています。自社のオペレーションを改善したい方や、オペレーションの構築に時間がなくて困っている方は、ぜひご相談ください。
この記事を書いた人
コラム編集室
よく読まれている記事
あなたにおすすめの記事
お気軽に
ご相談ください
属人的な業務を脱却させたい、仕組で事業を伸ばしたい、DXに適応した業務改革を行いたい等
オペレーションに関する悩みや不明点は全てクリアにできます。お気軽にご相談ください。