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カーボンニュートラルとは?意味や企業の取り組みなどをわかりやすく解説

2023.08.09

カーボンニュートラルとは、「温室効果ガスの排出量が全体としてゼロになっている状態」を指します。地球温暖化への対策は今や世界共通の課題となっており、全ての国がその対応を求められています。

この記事では、カーボンニュートラルの意味や注目を集める背景、企業におけるカーボンニュートラルへの対応策について分かりやすく説明します。

カーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量が全体としてゼロになっている状態を表す言葉です。環境省はカーボンニュートラルについて、「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味する」と説明しています。

「排出を全体としてゼロ」とは、「温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いた合計をゼロにする」ことを意味します。温室効果ガスの排出量を可能な限り削減する一方で、ゼロにするのが難しい分野も存在します。そのため、森林などでの吸収や特定の技術を活用して排出量を相殺し、事実上ゼロ(ニュートラル)にする計画が進行中です。

温室効果ガスとは

温室効果ガスとは、大気中に存在する二酸化炭素(CO2)、メタン、一酸化二窒素(N2O)、フロンガスなどの総称です。これらのガスは、太陽からの光で温められた熱(赤外線)を吸収・放出する性質を持ち、地表を温める効果をもたらします。これを「温室効果」と呼びます。

この温室効果によって、地球の平均気温は約14度に保たれています。もしも温室効果ガスが存在しなかった場合、地球の温度は約マイナス19度になると考えられています。しかし、大気中の温室効果ガスが増加すると、地表の温め効果が強まり、結果として地球温暖化の原因の一つとなってしまうのです。

カーボンニュートラルを目指す背景

日本を含む世界各国がカーボンニュートラルを目指す背景には、地球温暖化への対応が世界全体で喫緊の課題となっているためです。

1900年代と比較して、2020年時点で世界の平均気温は約1.1℃上昇しており、これが継続すれば更なる上昇が予想されます。さらに、近年では世界各地で気象災害が頻発しており、これによる影響が広がっています。地球温暖化が進行すれば、平均気温の上昇や災害のリスクが一層高まると予想されています。

そのため、地球温暖化の主な原因とされる温室効果ガスの排出を削減し、事実上ゼロにする「カーボンニュートラル」が効果的な対策とされています。地球温暖化は世界全体の共通の問題であり、国際的な枠組みである国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)を通じて、各国がカーボンニュートラルへの取り組みを進めています。

具体的な数値目標を定めたCOP3『京都議定書』

1995年に国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の第1回であるCOP1が開催されました。その後、1997年のCOP3では、地球温暖化への取り組みを具体的に定めた『京都議定書』が採択。この議定書では、先進国が1990年比で温室効果ガス排出量を5%以上削減することを目標としました。

第一約束期間(2008~2012年)では、加盟した先進国23か国のうち11か国が目標を達成しました。しかしながら、この約束は先進国に対してのみ課されており、発展途上国には適用されませんでした。これにより、CO2排出量の多い発展途上国においては数値目標が義務化されておらず、不公平との指摘がありました。この問題により、先進国と発展途上国との間で意見対立が生じ、一時的な混乱が続きました。

数値目標を各国が設定し、国際的な温室効果ガスの削減に取り組むという基本的なアプローチは、後のパリ協定に引き継がれることとなりました。

世界共通の目標を掲げたCOP21『パリ協定』

2015年にフランスのパリで開催されたCOP21において、京都議定書に代わる新たな枠組みとして『パリ協定』が採択され、2016年に発効しました。この協定は、2020年以降の国際的な取り組みを指針付けるものであり、世界共通の目標が掲げられています。

具体的には、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、かつ1.5℃に抑える努力をする」という目標が設定されました。また、「温室効果ガスの排出と吸収・除去の均衡を達成するために、最新の科学に従って早期の削減を行う」とも明記されています。

この協定では、アメリカや中国、インドなど、先進国と発展途上国を問わず、全ての参加国でカーボンニュートラルへの取り組みが進行しています。パリ協定は、地球温暖化への対策において国際的な連携と行動を促進する重要な枠組みとなっています。

日本政府のカーボンニュートラル実現への取り組み

カーボンニュートラルを実現するために、日本政府主導で進められている代表的な取り組みについて解説します。

地域脱炭素ロードマップ

地域脱炭素ロードマップとは、2030年までにカーボンニュートラルを達成するための地域における脱炭素戦略の具体策を環境省が示したものです。このロードマップは、政策を総合的に展開し、人材、技術、情報、資金などを積極的に支援するとしています。

具体的には、以下の目標が掲げられています:

・「脱炭素先行地域」を少なくとも100箇所設定すること。

・全国的に自家消費型太陽光発電や省エネ住宅、電動車などの重点対策を実施すること。

これらの目標を達成するために、基盤的な政策や施策も同時に推進されています。また、脱炭素先行地域の成功モデルを他の地域に展開し、2050年を待たずしてカーボンニュートラルを実現することを目指しています。この地域脱炭素ロードマップは、地域レベルでの積極的な取り組みを通じて、日本全体のカーボンニュートラル実現に寄与するものとなっています。

改正地球温暖化対策推進法

2021年5月に、『改正地球温暖化対策推進法』が成立しました。この法律は、もともと1997年に京都議定書の採択に伴い制定され、その後何度か改正を経てきたものです。2021年の改正では、以下の3つのポイントが特に強調されています。

1.2050年までのカーボンニュートラルの実現を基本理念として明記

2.地域の脱炭素化を推進する事業促進計画・認定制度を創設

3.企業における温室効果ガス排出量の情報をオープンデータ化し、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資にも対応

政府は、2050年までにカーボンニュートラルを達成するため、長期的な展望をもとに法律を改正し、必要に応じて更なる施策を進めていく意向を示しています。

グリーン成長戦略

グリーン成長戦略とは、2050年までにカーボンニュートラルを達成するために、「経済と環境の好循環」を築くための産業政策です。カーボンニュートラルの実現は容易ではなく、エネルギーや産業構造の転換、大胆な投資によるイノベーションが不可欠です。このため、政府は予算、税制、規制改革、国際協力などの政策を結集して実施する方針です。

重点的に推進するのは、今後成長が期待される次の14分野です。

エネルギー関連産業

①洋上風力・太陽光・地熱産業(次世代再生可能エネルギー)

②水素・燃料アンモニア産業

③次世代熱エネルギー産業

④原子力産業

輸送・製造関連産業

⑤自動車・蓄電池産業

⑥半導体・情報通信産業

⑦船舶産業

⑧物流・人流・土木インフラ産業

⑨食料・農林水産業

⑩航空機産業

⑪カーボンリサイクル・マテリアル産業

家庭・オフィス関連産業

⑫住宅・建築物産業・次世代電力マネジメント産業

⑬資源循環関連産業

⑭ライフスタイル関連産業

企業におけるカーボンニュートラルへの対応策

カーボンニュートラルへの取り組みは多くの企業にとって重要な課題ですが、具体的な対応策を見つけることが難しい場合もあります。ここでは、企業がカーボンニュートラルに向けて進む方向性について紹介します。

温室効果ガス排出量の算出および削減

自社の活動から排出される温室効果ガスを減少させることが重要です。まずは、自社の活動による温室効果ガスの排出量を可視化しましょう。

例えば、製造業の工場などでは、IoTセンサーを利用してエネルギーの使用量などを正確に測定することから始めることをおすすめします。エネルギーの使用状況を把握し、それぞれの活動ごとに排出される量を計算します。自社の排出量が分かれば、エネルギーの消費を減らす方法や、低炭素なエネルギーを使用する方法、エネルギー源の変更などを検討してみましょう。

再生可能エネルギーへの切り替え

再生可能エネルギーは、太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスなど、一度利用しても再生が可能であり、資源が枯渇せず繰り返し利用できるエネルギー源です。一方、石炭火力発電などの化石燃料を使った発電では、燃料を燃やす過程で多くのCO2が排出されます。再生可能エネルギーは発電時にほとんどCO2を排出しないため、これに切り替えることで、大幅なCO2排出削減が期待されます。

自動化による生産効率の向上

製造業などの工場では、自動化による生産効率の向上が温室効果ガス排出の削減につながります。例えば、機械や設備を自動化することで、停止時間を最小限に抑えるなど、生産効率が高まります。また、食品を扱う流通業などでは、AIを用いた需要予測により発注が最適化され、食品ロスの削減が期待できます。無駄を削減し生産効率を高めることで、温室効果ガスの発生を抑制します。

まとめ

本記事では、カーボンニュートラルの意味や注目を集める背景、企業におけるカーボンニュートラルへの対応策について解説しました。

環境対策は持続可能な経営にとって不可欠な要素であり、地球温暖化対策への取り組みは全世界で共通の課題となっています。ぜひ本記事を参考にしてみてください。

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この記事を書いた人

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