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コアコンピタンスとは?意味やケイパビリティとの違い、見極めの方法を詳しく解説

2023.08.09

企業の強みを意味する「コアコンピタンス」とは、どのような役割があるのでしょうか。

本記事では、コアコンピタンスが持つ意味や類似用語の違い、見極めるための5つの視点、その具体的な手順について解説しています。

コアコンピタンスとは?

コアコンピタンス(Core competence)とは、「企業の中核能力」を指す用語です。1990年に、アメリカの経営学者であるC.K. プラハラードとゲイリー・ハメルによる「コア・コンピタンス経営」にて提唱された概念です。

コアコンピタンスは、顧客の利益をもたらす競争優位を生み出す源泉であり、「他社に真似できない自社ならではの中核能力」と定義されています。

企業が内部に持っている中核的な能力が持続的な競争優位の源泉であるという考え方で、C.K. プラハラードらは、シャープの液晶技術、ホンダのエンジン技術をコアコンピタンスの例として挙げています。

コアコンピタンスの3要件

コアコンピタンスは、次の3つの要件を兼ね備えることが条件とされています。

1.顧客に何らかの利益をもたらす自社能力

2.競合相手に真似されにくい自社能力

3.複数の商品・市場に推進できる自社能力

顧客に何らかの利益をもたらす自社能力

企業の中核能力が、顧客に何らかの利益や価値をもたらすことが重要です。たとえ他社より優れた能力や強みがあっても、顧客にとっての利益を提供しなければ、自社の利益につながりません。

具体的には、他社には真似ができない高いレベルの開発力や技術力があっても、その技術を活用できなければ競争上の優位性を築くことは難しいでしょう。その開発力、技術力を用いて他社の製品にはない機能や付加価値がある製品を提供することで、顧客の利益につなげていく能力を指します。

競合相手に真似されにくい自社能力

コアコンピタンスは、競合他社が容易に真似することが難しい能力であるべきです。企業独自の能力を生み出すことができても、競合相手に簡単に真似されては、コアコンピタンスにはなりません。コアコンピタンスとは、他社を寄せつけない圧倒的な能力であり、企業が真似されにくい能力を築くことで、競争の波風にも強くなることができます。

複数の商品・市場に推進できる自社能力

持続的な成功を追求するためには、コアコンピタンスが複数の商品や市場で応用可能であることが重要です。単一の商品や市場に依存することなく、幅広い領域で活かせる能力を有する企業は、変動するビジネス環境にも適応しやすくなります。例えば、確立されたブランド力を持つ企業は、異なる産業に進出することで多角的な事業展開を行い、競争力を維持できるでしょう。

コアコンピタンスとケイパビリティの違い

コアコンピタンスとケイパビリティは、ともに経営戦略論における「企業の強み」を指す代表的な言葉です。ここでは、コアコンピタンスとケイパビリティとの違いについて説明します。

ケイパビリティとは

ケイパビリティとは、企業が保有または得意とする、組織全体の能力や専門知識を指す用語です。この概念は、1992年にBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)のジョージ・ストークス、フィリップ・エバンス、ローレンス E.シュルマンの3人によって提唱されました。

ケイパビリティは、企業の内部資源やスキルを組み合わせて形成され、競争力を高めるための要素です。これは、特定の業務や機能における優れたパフォーマンスや専門性を指し示すものであり、市場での競争上の優位性を創出するための基盤となります。

例えば、「研究開発力」は、新しい製品や技術を開発するための能力を指し、企業のイノベーション力に影響を与えます。「独自の技術力」は、他社が模倣できない技術的な専門性を示し、「マーケティング力」は、効果的な市場戦略やブランド構築能力を表します。

コアコンピタンスとケイパビリティの違い

コアコンピタンスとケイパビリティは、どちらも企業の強みを表す概念ですが、それぞれ異なる側面に焦点を当てています。ジョージ・ストークスらによる説明によれば、以下のような特徴があります。

・コアコンピタンス

バリューチェーン(価値連鎖)内の特定の技術力や専門知識

・ケイパビリティ

バリューチェーン全体にわたる組織的な能力

コアコンピタンスは特定の技術や専門性に焦点を当て、ケイパビリティは組織全体の能力やプロセスにフォーカスしており、両者は企業の強みを異なる側面から捉えています。

C.K. プラハラードらは、ホンダのコアコンピタンスを「エンジン技術」、ジョージ・ストークスらは、ホンダのケイパビリティを「優れたディーラー管理力」「スピーディーな製品開発力」などと挙げています。

コアコンピタンスはケイパビリティの集合体

ケイパビリティは、コアコンピタンスに包含される関係にあります。

コアコンピタンスは、複数のコンピタンスから成り立ち、コンピタンスを形作る要素として、組織能力であるケイパビリティがそれぞれ存在しています。つまり、コアコンピタンスはケイパビリティの集合体であると整理できます。

コアコンピタンスが特定の技術力を指す場合、その背後には様々なケイパビリティが結集しています。

例えば、その技術を市場に展開し成功させるためには、独自のマーケティング力が必要です。市場のトレンドを把握し、競合他社と差別化するための戦略を立案し、顧客に魅力的な提案を行うことが求められます。また、スピーディーな研究開発力がなければ、急速に進化する市場に適応するための革新的な製品やサービスを提供することは難しいでしょう。さらに、熟練した技術者の技術力がなければ、高品質な製品を開発し、競争相手との差別化を図ることが難しくなります。

コアコンピタンスを見極めるための5つの視点

コアコンピタンスの質を見極めるためには、5つの視点が重要です。これらの視点をすべてクリアすることで、真のコアコンピタンスであることが確認できます。

1.模倣可能性(Imitability)

2.移動可能性(Transferability)

3.代替可能性(Substitutability)

4.希少性(Scarcity)

5.耐久性(Durability)

①模倣可能性(Imitability)

まず、保有している技術や特性が競合他社に簡単に真似できるかどうかに着目します。他社による模倣が容易でない場合、その分野で競争優位性を維持できる可能性が高まります。逆に、他社による模倣が容易な場合、競争優位性を維持することは難しくなります。

この視点から見た場合、コアコンピタンスとは、他社が追随することが難しく、市場を独占できるような高度な技術や製品であることが求められます。つまり、他社に真似されにくい独自性や専門性を持つ能力が、真のコアコンピタンスとされます。

真のコアコンピタンスを持つ企業は、その分野で他社を寄せ付けず、持続的な競争上の優位性を築くことができるでしょう。これによって、市場での地位を確立し、顧客に対して独自の価値を提供することが可能となります。

②移動可能性(Transferability)

コアコンピタンスを見極めるには、移動可能性という視点も重要です。移動可能性とは、

・1種類の製品、分野に限らない

・一つの技術で多くの製品や多方面の分野に応用が可能

・幅広い展開が期待できる

といった視点のことを言います。

移動可能性の視点では、一つの技術や能力が単一の製品や分野に依存するのではなく、異なる領域での展開が可能であることが求められます。これによって、企業は市場の変化に適応しやすく、新たなニーズや機会に迅速に対応することができるでしょう。

例えば、特定の製造技術が幅広い産業に応用可能であり、異なる製品の生産に利用できる場合、それは移動可能なコアコンピタンスと見なされます。このような能力は、企業が新しい市場に進出したり、新たな製品を開発したりする際に大きな強みとなります。

③代替可能性(Substitutability)

コアコンピタンスを見極めるための、3つ目の視点が代替可能性です。

・自社の強みと考える技術や能力、製品を別のものに置き換えることができない

・自社の強みである技術や能力などは、唯一無二の存在

という視点です。

この視点では、自社の強みと見なす技術や能力、製品を他のもので置き換えることが難しいかどうかを評価します。自社の特定の技術や能力が他のものに簡単に代替される可能性が低いほど、それは真のコアコンピタンスとされます。逆に、代替品が容易に見つかってしまう場合、その能力はコアコンピタンスとはみなされません。

④希少性(Scarcity)

コアコンピタンスを見極める4つ目の視点が希少性です。希少性とは、数が少なく珍しいこと。コアコンピタンスでは、

・技術や特性が珍しい

・希少価値がその技術や特性などに存在している

を見極めのポイントとしています。

ただし一般的には、

ただし、一般的には「代替可能性」「模倣可能性」という要件を満たしていれば、希少性も一定程度クリアしていると見なすことができます。代替可能性が低く、模倣可能性が低い能力は、通常希少性も高いと考えられます。

代替可能性、模倣可能性、希少性という3つの視点を持ち、それぞれの視点で高評価を得ることができれば、市場に対して圧倒的なアドバンテージを打ち出せるでしょう。

⑤耐久性(Durability)

コアコンピタンスを見極めるための最後の視点は耐久性です。耐久性とは、短期間でその強みが消失せず、長期にわたって他社の追随を許さない競争的優位性を維持できるかどうかを評価する視点です。

耐久性が高ければ高いほど、コアコンピタンスの価値と信頼性が確保されます。しかし、急速な変化が続く現代社会では、耐久性を保つことが難しくなっています。特に技術分野では、新たな競合や進化する市場に対応する必要があります。

一方で、ブランド価値や名声は経年によって増加することも考えられます。企業は耐久性のあるコアコンピタンスを大切にしつつ、柔軟性と革新力を持つことが成功の鍵です。

コアコンピタンスを見極める手順

ここからは、コアコンピタンスを見極める手順を解説します。次のステップを踏み、何が自社のコアコンピタンスなのかを見極めてください。

1.強みの洗い出し

2.強みの評価

3.絞り込み

①強みの洗い出し

コアコンピタンスを発見するには、まず自社の強みを洗い出す作業から始める必要があります。その際、効果的な方法として「ブレーンストーミング」が挙げられます。

ブレーンストーミングは、限られた時間内で自由な議論を行い、多くのアイデアを出し合う手法です。異なる部門のメンバーや意見を交換することで、多面的な視点で分析を進めることが可能です。自社の技術力や商品力だけでなく、組織文化やブランド力など広範な側面を含めて話し合うことが重要です。

また、自社の内部環境と外部環境を分析する際には、「SWOT分析」が役立ちます。SWOT分析は、自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの要素を通じて内外の状況を分析する手法です。これによって、自社のプラスの要素だけでなく、マイナスの要因やリスクも把握できます。これにより、柔軟な戦略を策定することが可能です。

この分析を通じて、既存の事業の課題や新たな事業展開のリスクを把握することができます。コアコンピタンスは中長期的な視点で考えるべきであり、複数の手法を組み合わせて多面的に分析を行うことが重要です。それによって、自社の真の強みを明らかにし、戦略的な優位性を築くことができるでしょう。

②強みの評価

自社の強みを洗い出した後は、次にそれをリスト化し、コアコンピタンスの3つの条件に適合するかどうかを精査します。3つの条件は先述した、「顧客に何らかの利益をもたらす自社能力」「競合相手に真似されにくい自社能力」「複数の商品・市場に推進できる自社能力」のことです。

強みに対する評価作業は主観的に行うのではなく、客観的な評価ができるように数値化することが重要です。競合他社との比較を通じて相対的な点数を付ける方法が効果的です。

もし競合他社が存在しない分野であれば、基準値を100として、自社の強みがどれくらいその基準を満たしているかを評価します。点数が高いほど、コアコンピタンスとなる可能性が高まります。精確な情報を元に、客観的な分析を進めることが重要です。

③強みの絞り込み

自社が複数の強みを持っている場合は、絞り込みの作業が必要です。絞り込みの際には、先に述べた5つの視点(模倣可能性・移動可能性・代替可能性・希少性・耐久性)を基準にして評価していきます。

また、SWOT分析や3C分析といったフレームワークを活用することもおすすめです。3C分析は、顧客(Customer)、自社(Company)、競合(Competitor)の3つの視点から事業戦略やマーケティング戦略を考える手法であり、客観的な視点で分析を進める際に役立ちます。

3C分析を行う際には、まず顧客や競合他社の分析を行い、それから自社の分析に移ることが重要です。特定の部門だけでなく、組織内の多様な意見を収集することも大切です。

コアコンピタンスの選定は、現在だけでなく将来の経営にも大きな影響を及ぼす重要な決定です。さまざまな手法を組み合わせながら、慎重に取り組むことが必要です。

まとめ

本記事では、コアコンピタンスが持つ意味や類似用語の違い、見極めるための5つの視点、その具体的な手順について解説しました。

コアコンピタンスは、企業の将来に向けた戦略的な基盤として重要であり、その選定は緻密な分析と洞察を要します。自社の強みを的確に理解し、競争優位性を築くために、さまざまな手法を組み合わせて取り組んでいくことが不可欠です。将来の展望を見据えつつ、コアコンピタンスを最大限に活用して事業の成功を目指しましょう。

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この記事を書いた人

Operation事業部

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