コールセンターは、顧客の問い合わせ対応から受注、市場調査にいたるまで、企業の営業活動のさまざまなシーンにおいて活用されています。顧客との接点という特性から、コールセンターの品質は顧客満足度への影響度が高く、企業にとってもきわめて重要な業務と言えます。
コールセンターの運用は、自社運営と外部業者への委託の2つの方法があります。近年では、自社のリソースを効率的に配置するためにコールセンター業務は外部に委託している企業も増えています。
では、実際にコールセンターを運用する際に、自社運用と外部業者への委託ではどれだけの費用面での差があるのでしょうか
今回の記事では、コールセンター業務を運用する費用について解説します。
コールセンターを外注する4つのメリット
専門性の活用
外注先は、最新のコールセンターテクノロジー、効果的なコミュニケーション技術、顧客満足度を最大化するための戦略など、コールセンター業務に特化した知識と経験を持っています。これにより、企業は最先端のサービスを利用でき、顧客対応の質を高めることができます。
また、外注業者は多様な業界のクライアントに対応しているため、異なる業種や市場における特有の要求に対応するノウハウを持っています。これにより、企業は業界固有のニーズに合わせたカスタマイズされたサービスを提供できます。
さらに、コールセンターの運営における複雑な問題や挑戦に対応するための専門的な解決策を提案できるため、企業はこれらの問題を効率的に解決できます。さらに、継続的なトレーニングと品質管理を通じて、サービスの一貫性と効率性を保証します。
柔軟なスケーリング
ビジネスは一定ではなく、季節性や市場の変動、キャンペーンなどによってコールセンターの需要が大きく変わることがあります。自社でコールセンターを運営する場合、これらの変動に対応するためには人員の増減や追加の設備投資が必要になりますが、これには時間とコストがかかります。
一方で、外注することにより、企業は需要の変動に応じてサービスをスケールアップまたはダウンさせることが可能です。外注先は多くのクライアントにサービスを提供しており、柔軟に人員を配置し、リソースを調整できる体制を持っています。そのため、繁忙期には迅速にサポートを増やし、閑散期には無駄なコストを削減することができます。
この柔軟性により、企業は市場の変化に素早く対応し、顧客サービスの品質を維持しながら効率的な運営を行うことができます。
集中的な事業運営
自社でコールセンターを運営する場合、大幅な人的資源、時間、および財務資源を要求されます。これには、人員の採用と訓練、インフラの構築と維持、日々の運営管理などが含まれます。これらは企業の主要な業務からリソースを逸らすことになり、ビジネスの核となる活動に集中することを難しくします。
コールセンターを外注することで、これらの管理上の負担が大幅に軽減されます。外注業者がコールセンター運営に関連するすべての業務を引き受けるため、企業は自社の主要業務、例えば製品開発、マーケティング戦略、顧客関係の強化、新市場への進出などに専念できます。これにより、企業の核となる強みを最大限に活かし、競争優位性を強化することが可能になります。
さらに、コールセンター業務を専門業者に委託することで、企業は顧客サービスの質を維持しつつ、経営資源をより戦略的かつ効率的に利用できるようになります。これは長期的なビジネス成長と安定性に寄与し、企業が市場での競争力を保持し続けるための重要な要素です。
リスク管理の改善
コールセンター運営には、通信障害、データの損失や漏洩、不適切な顧客対応など、多くのリスクが伴います。これらのリスクに対処するためには、高度な技術的知識、セキュリティ対策、緊急時対応プランなどが必要です。
外注業者は通常、これらのリスクに対処するための専門知識と経験を有しており、高度なセキュリティシステム、データバックアップのソリューション、災害時の復旧プランなどを提供します。これにより、データの安全性が向上し、顧客情報の保護が強化されます。
さらに、外注業者は法規制の遵守に精通しているため、法的なリスクも軽減されます。コンプライアンス違反による罰金や評判の損失を避けるために、適切なプロセスとガイドラインに従った運営が行われます。
また、外注先がコールセンターの運営に関連する問題に迅速に対応するため、企業は内部リソースを自社の主要業務に集中させることができます。これにより、業務運営の柔軟性が向上し、ビジネスの安定性が保たれます。
コールセンターの料金体系について
コールセンターの外注には、主に2つの料金体系があります
月額固定型
月額固定型は、1か月間の対応上限件数を決め、それに従って利用料を設定する料金体系です。上限件数が上がるほど、段階的に料金が高くなります。1か月あたりの問い合わせ対応件数が比較的容易に推定できる場合は、こちらの料金体系が向いていると言えます。
しかしながら、設定件数を超過した場合には、「コールオーバー費用」というものがかかり、これは通常の対応単価と比べて割高に設定されていることから、月によって件数に波があるなど、正確な稼働数が予測できない場合は向いていないと言えます。
従量課金型
従量課金型は、月額固定のような期間内での対応上限件数を定めず、対応件数当たりで利用料を設定する料金体系です。対応件数に比例して料金が決まるため、月額固定型のようなコールオーバー費用などの対応件数の過不足によるロスが少なく、無駄のない運用が可能です。
その一方で、1件当たりの対応単価については、月額固定型と比べて高めに設定されていることが多いため、毎月の対応件数が予測できる場合や、大量の件数が見込まれる場合は向いていないと言えます。
コールセンターの外注にかかる主な費用の相場
運用費用
上記に記載の通り、月額固定型か従量課金型で月々の運用費用が決定します
外注の稼働数、稼働時間によって変動はありますが、月額固定型ですと、月々10万~30万が相場となっており、従量課金型ですと、1件当たり300円~1000円が相場となっています。
初期費用
上記の運用費用とは別に、コールセンターを導入する際の初期費用がかかります。この初期費用には、コールセンター運用のためのシステムの導入費や、通信インフラの整備代、外注のオペレーターの教育料などが含まれ、運用開始時に1度のみ、5万円程度かかります。
コールセンターの外注費用に差が出る3つの要素
コールセンターの外注における運用費用について、具体的には下記の要素が料金の多寡に影響しています
人員体制
受託する業務を何人で行うのか、また、人員は「専任」なのか「兼任」なのかによって費用の相場は変動します。
対応する件数が多く、複数の人員を配置する必要がある場合は、その分費用は増加します。
また、「専任」はほぼ同じオペレーターが対応し、「兼任」は複数人で対応する形になり、「専任」の方が料金が高くなります。マニュアルに沿って回答するだけの簡単な問い合わせ対応等であれば「兼任」でも大丈夫ですが、ある程度複雑な質問や、専門的な知識・トークスキルが必要な場合には「専任」の方が好ましいと言えるでしょう
対応時間
対応する曜日・時間によっても料金は変動します。
土日や夜間まで対応する場合ですと、平日の日中と比べても料金が高くなります。
対応範囲
どのような業務に対応してもらうかも料金を左右する要素です。業務の範囲が多岐にわたり難易度の高いものであれば、その分オペレーターを教育していく必要がありますし、そのためのマニュアルや業務フローなどの資料作成にもコストがかかるため、料金が高くなります。
コールセンターを自社運営する3つのメリット
直接的な顧客対応の管理
自社運営のコールセンターでは、企業が独自のサービス基準や方針を設定し、それに基づいて顧客対応を行うことができます。この直接的な管理により、顧客の問い合わせや懸念に対する対応が企業のブランドイメージや価値観と一貫性を持って行われ、顧客満足度を向上させることが可能です。
また、社内のコールセンターは従業員が企業文化や製品に関する深い理解を持っているため、より質の高い顧客サービスを提供することが期待できます。彼らは企業の目的や価値観を直接反映し、顧客に対して一貫したメッセージを伝えることができます。
迅速なフィードバックと問題解決
自社運営のコールセンターでは、顧客からの問い合わせやフィードバックが直接企業に届きます。これにより、顧客の声を即時に捉え、その場で対応策を考えることができます。このプロセスは、顧客満足度の向上に直結し、信頼関係の構築にも寄与します。
また、顧客からのフィードバックは製品改善やサービス向上の貴重なインプットとなります。自社運営のコールセンターを通じて得られた情報をもとに、企業は市場のニーズや傾向をリアルタイムで把握し、迅速にビジネス戦略を調整することができます。
データのコントロールとセキュリティ
自社運営のコールセンターでは、顧客から得られる貴重なデータが社外に漏れるリスクを軽減できます。これは、特に個人情報や機密情報を扱う際に非常に重要です。
自社でデータを管理することにより、企業はデータアクセスの管理、利用ポリシーの設定、データの収集・保管・処理方法について完全なコントロールを持つことができます。これにより、データ保護法規や規制への遵守を強化し、セキュリティ違反やデータ漏洩のリスクを減少させることが可能です。
また、自社運営ではデータの分析や活用も内部で行うことができ、顧客の傾向やニーズをより深く理解するためのインサイトを得ることが可能です。この情報は、サービスの向上や戦略の策定に直接活用でき、ビジネスの成長に貢献します。
コールセンターを自社運営する場合の費用の相場
コールセンターを自社運営する場合は、下記のような費用が掛かります。
初期費用
コールセンターを自社運営する場合、コールセンターを設置するための施設の確保、システム・インフラの整備のための費用がかかります。
今ある施設の一部をコールセンターに充てるのか、ゼロから新たに用意するのかなどの違いはありますが、これらの設備費用で30万~250万円程度かかります。
また、コールセンターのための人材を新たに雇用する場合、人材の募集や採用にかかる費用も追加コストとしてかかってきます。
運用費用
システムの利用料だけでなく、施設やインフラを維持・管理するための費用もかかります。特にコールセンターのために新たに賃貸で物件を用意している場合などは、家賃もかかってくるため、それによって大きく幅がありますが、毎月5万~80万円程度かかります。
また、コールセンターのための人件費も当然かかってきます。正社員であれば毎月月40万~50万円、正社員ではなく、パートやアルバイトの方の場合は時給1000円~2000円程度かかります。
以上により、コストという観点であれば、自社運用よりも外注運用した場合の方が格段に安く導入・運用することができると言えるでしょう。
ただし、上記で書いた通り、内製化することによるメリットもありますので、予算をしっかりと決めて、予算内で最大の効果を出せる方法を検討していくことが大切です
まとめ
コールセンターは顧客との重要な接点であり、効率化することでビジネスの成功につながります。コールセンターの費用構造を理解して、適切な体制を構築していくことで、顧客満足度の向上につながるでしょう。
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