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イノベーションのジレンマとは?その概要と抱える3つのリスク、防止対策について解説します!

2023.08.09

イノベーションのジレンマとは

「イノベーションのジレンマ」とは、クレイトン・クリステンセン教授によって提唱された概念で、成功を収めている企業が新しい技術や市場変動に適応する際に直面する困難を指します。特に、市場をリードする企業が、新興の技術やビジネスモデルの採用に失敗し、市場のリーダーシップを失う現象を示しています。

このジレンマには、主に二つのタイプのイノベーション、すなわち「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」が関与します。

持続的イノベーション

持続的イノベーションは、既存の市場や顧客のニーズをさらに高める技術革新を指します。これは製品やサービスの一貫した改善や進化として捉えられ、市場の主要なプレーヤーによって主導されることが多いです。例えば、カメラの解像度の向上、パソコンの処理速度の上昇などがこれに当たります。

破壊的イノベーション

破壊的イノベーションは、全く新しい市場を作り出すか、あるいは既存の市場を劇的に変化させる技術革新を指します。この種のイノベーションは、初めは低品質と見なされることが多いものの、時間が経つにつれて市場の主要なセグメントを占めるようになります。スマートフォンや電子書籍などが破壊的イノベーションの例です。

イノベーションのジレンマが抱えている3つのリスク

イノベーションのジレンマが発生すると、事業にはどのような影響があるのでしょうか。イノベーションのジレンマが抱えているリスクを紹介します

市場シェアの喪失

新興の競合によって、既存の市場でのシェアを奪われるリスクが増加します。この現象は、特に技術革新が急速に進行する業界で顕著に見られます。新しい技術やビジネスモデルが市場に登場すると、消費者の関心やニーズは新しい方向に移行する可能性が高くなります。企業がこれに迅速に対応できない場合、新興企業に市場を奪われるリスクが生じます。例えば、従来の携帯電話業界がスマートフォンの出現に適応しきれず、そのシェアをスマートフォン製造企業に奪われたケースなどがこれに該当します。

収益性の低下

新しいビジネスモデルや技術の採用に遅れることで、収益性が低下する可能性があります。市場の変動に適応するためには、研究開発やマーケティングなどの初期投資が必要となります。しかし、これらの取り組みが遅れると、企業は市場の変動に迅速に対応する能力を喪失し、収益の機会を逃す可能性が高まります。更に、新技術の導入が遅れることで、製品やサービスの品質が競合と比較して劣るとの認識が市場に広がれば、価格競争に巻き込まれ、収益率の低下を招く可能性も考えられます。

ブランド価値の損失

革新的でないとのイメージが固定化されることで、ブランド価値が低下するリスクが考えられます。ブランド価値は、消費者の企業や製品に対する認識や期待に大きく影響されます。もし、企業が革新的ではない、または時代遅れであるとの印象が消費者の間で広がると、そのブランドに対する信頼や評価が低下し、結果として販売や収益にも影響が出ることが予想されます。ブランドは企業の最も価値ある資産の一つであり、それを維持、強化するためには、常に市場の変化や消費者のニーズに対応する革新的な取り組みが求められます。

イノベーションのジレンマが発生する要因

このように、イノベーションのジレンマは企業にとって、多くのリスクを持っています。イノベーションのジレンマが発生してしまう要因には下記のようなものがあります。

既存の顧客や市場への過度なフォーカス

成功を収めると、企業はその成功を維持するために既存の顧客や市場に注力する傾向があります。この現象は、企業が安定した収益源を確保することの重要性を高く評価する結果として生じます。しかし、この過度な注力は、経営資源や注意を新しい機会から逸らす危険性を持っています。企業が既存の顧客のニーズに固執しすぎると、それが新しい市場や技術の動向を見逃す原因となることがあります。既存の顧客層が持つニーズや要望に過度に寄り添うことで、将来的な市場のシフトや新たな消費者層の出現に対応できなくなるリスクが高まります。

資源の不適切な配分

成功している製品やサービスに資源を集中させることで、新しいイノベーションのための研究開発に必要な資源が不足することがあります。主要な製品ラインや事業領域に焦点を絞ることは、確かに短期的な利益を最大化する上で有効な戦略となり得ます。しかし、中長期的な視点で見ると、これは企業の成長や持続的な成功を妨げる要因となることが考えられます。新しい技術の研究や新市場の探索に十分な資源を投じることなく、過度に現行の事業に依存することは、変動する市場環境に対する企業の適応力を低下させます。

組織構造の硬直性

大手企業では、往々にして組織の構造が複雑化し、新しいイノベーションへの取り組みが難しくなることがあります。規模が大きくなるにつれて、組織内のコミュニケーションや意思決定の過程が複雑化する傾向があります。この複雑性は、新しいアイディアや提案が組織の各レベルで適切に評価されることを妨げる可能性があります。また、確立された組織文化や既存の業務フローに固執することで、変革や革新の取り組みが阻害されることが考えられます。

短期的な業績重視

四半期ごとの業績を重視する文化では、長期的な視点でのイノベーションが後回しにされることが考えられます。特に、株主や投資家の短期的なリターンを優先する傾向が強い企業では、この問題が顕著になることがあります。短期的な業績目標を達成するための戦略や施策が優先される中で、中長期的な投資や研究開発が疎かになるリスクが高まります。このような経営方針は、イノベーションのジレンマを引き起こす重要な要因となり得ます。

イノベーションのジレンマに陥らないための3つの事前防止策

市場の動向を常に監視

イノベーションのジレンマを回避するための最も基本的な手法の一つは、市場の変化や新しい技術の動向を常に監視することです。これには、競合の動向や消費者の嗜好の変化、新しい技術や製品の出現を日常的にチェックすることが含まれます。定期的な市場調査や競合分析を行い、その結果を経営戦略や製品開発に反映させることで、市場の変化に素早く対応することが可能となります。さらに、外部の専門家やコンサルタントとの協力を通じて、独自の視点や知見を取り入れることも有効です。

組織の柔軟性を維持

組織の成長とともに、その構造や文化が硬直化する傾向がありますが、これはイノベーションのジレンマを引き起こす主要な要因となり得ます。したがって、組織の柔軟性を維持し、新しいアイディアや技術の導入を迅速に行うための体制を整えることが重要です。これを実現するためには、定期的な組織の見直しや役割の再定義、新しいプロジェクトチームの設立などの取り組みが考えられます。また、組織内のコミュニケーションを促進し、階層を超えた意見交換やフィードバックの機会を増やすことも、柔軟性の維持に寄与します。

多様性を尊重する文化の醸成

多様性は、新しいアイディアや革新的な解決策を生み出す上での強力な源泉となります。多様な背景や専門知識を持つ人材の採用や育成を通じて、組織内の多様性を増加させることで、様々な視点や考え方が集まるプラットフォームを形成することができます。このような組織文化は、イノベーションのジレンマに対する予防策として非常に効果的です。多様性を尊重する文化を醸成するためには、組織のリーダーシップがその価値を理解し、積極的に推進することが必要です。また、研修やワークショップを通じて、多様性の重要性を組織内の全てのメンバーに浸透させることも重要です。

まとめ

「イノベーションのジレンマ」とは、成功している企業が新しい技術革新に対応しようとする際に直面する困難を指す概念であり、これは特に持続的イノベーションと破壊的イノベーションの間のバランスを取ることの難しさに起因しています。このジレンマを乗り越えるためには、既存の成功を維持しつつ、新しい市場や技術の動向に敏感であり続ける必要があります。イノベーションのジレンマを認識し、それを乗り越えるための策を講じることで、企業は持続的な成長と革新を同時に追求することが可能となります。

最後に、クロス・オペレーショングループは、営業・カスタマーサクセス・カスタマーサポートのオペレーション構築・効率化に向けたコンサルティングサービスを提供しています。イノベーションの推進に取り組む際の体制づくりや社員の教育など、組織内における仕組み化の必要性は感じつつも、取り組む時間がなくて困っている方は、ぜひご相談ください。

この記事を書いた人

Operation事業部

佐久間 純也

2023年6月入社。老舗の卸売業者にて経理をはじめとしたバックオフィス全般、営業事務等の業務改善を経験した後、地域の会計事務所にて、経営財務コンサルタントとして従事。財務会計分野だけでなく、お客様の課題解決に広く携わりたいと思い、クロス・オペレーショングループに入社。お客様に寄り添ったヒアリング、課題整理が得意。娘の影響で最近TVゲーム熱が再燃している。

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