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SaaSビジネスのカスタマーサクセスとは?注目される理由や役割と業務内容、導入時のポイントを解説!

最終更新日:2024.10.16作成日:2024.07.12

SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスとは?

SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスは、顧客がソフトウェア利用を通じて最大限の価値を引き出せるよう支援する、包括的かつ戦略的な取り組みです。

具体的には、顧客のオンボーディングから始まり、トレーニングや教育によって顧客が製品を効果的に利用できるようにし、定期的なエンゲージメントを通じて顧客の使用状況や満足度をモニタリングします。さらに、顧客フィードバックを収集し、それを製品改善に反映させることで、一層の価値提供を図ります。また、データ分析を用いて顧客の行動やニーズを理解し、適切なアップセルやクロスセル戦略を展開します。

これにより、解約率(チャーン率)の低減、顧客の長期的なロイヤルティの向上、そしてビジネスの持続的成長を実現することが目指されます。

SaaSビジネスでカスタマーサクセスが注目される理由

SaaSビジネスにおいてカスタマーサクセスが注目される理由はいくつかあります。以下にその主な理由を解説します。

1. 収益モデルの性質

SaaSビジネスは通常、月額や年額のサブスクリプションモデルを採用しています。このモデルでは、新顧客の獲得だけでなく、既存顧客のリテンション(保持)がビジネスの成功にとって極めて重要です。既存顧客が継続的に契約を更新しないと、収益が急激に減少してしまうため、顧客が満足して利用を続けることが収益安定の鍵となります。

2. 顧客獲得コスト(CAC)の高さ

新規顧客を獲得するためのコストが高い場合、既存顧客を維持する方が遥かにコスト効率が良いです。カスタマーサクセスを強化することで、顧客の満足度とロイヤルティを高め、長期的な関係を築くことができます。

3. 競争の激化

SaaS市場は非常に競争が激しいため、一度契約した顧客が競合製品に乗り換えるリスクは常に存在します。優れたカスタマーサクセスは、顧客のニーズに迅速に対応し、他の競合製品に移る理由を減らすことができます。

4. アップセルとクロスセルの機会

既存顧客が満足している場合、新しい機能や上位プランへのアップグレード(アップセル)、および他の関連製品の導入(クロスセル)の機会が増えます。これはビジネスの追加収益源となるため、カスタマーサクセスは非常に重要です。

5. 顧客の成功がビジネスの成功

顧客が実際に成功を収めることで、その成功事例がマーケティングや営業活動にも有効に活用できます。ポジティブなユーザー体験は口コミや紹介を生む可能性が高く、新たな顧客を引き付ける効果があります。

6. データドリブンな改善

カスタマーサクセスチームは顧客の利用データを集め、製品の弱点や潜在的な改善点を特定します。このデータを活用することで、製品やサービスの品質を向上させることができ、顧客満足度をさらに高めることができます。

以上の理由から、SaaSビジネスにおいてカスタマーサクセスは収益の安定化、競争優位性の確保、追加の収益機会の最大化、顧客のロイヤルティ向上、そして製品の継続的な改善に不可欠となり、その重要性はますます高まっています。

SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスの役割

SaaS(Software as a Service)ビジネスにおけるカスタマーサクセスの役割は多岐にわたり、顧客が提供されるソフトウェアを通じて最大の価値を得られるよう支援するための様々な活動に関わります。以下に主要な役割を解説します。

1. オンボーディング

新規顧客がスムーズにサービスを利用開始できるように支援します。具体的には、初期設定、アカウントのセットアップ、基本機能の導入といったプロセスをサポートします。これにより、顧客が早い段階で製品の価値を実感できるようにします。

2. トレーニングと教育

顧客がサービスを最大限に活用できるよう、トレーニングや教育を提供します。ウェビナー、動画チュートリアル、マニュアル、ナレッジベースなど多様な形式で提供され、顧客が自行的に学びやすい環境を整えます。

3. 継続的なエンゲージメント

定期的に顧客と連絡を取り、製品の利用状況、達成目標、問題点などについて話し合います。これにより、顧客のニーズや課題を把握し、適切なサポートを提供します。

4. 問題解決とサポート

顧客が直面する問題や課題に迅速に対応し、解決策を提供します。これには、技術的な支援を含む場合もあり、専門的な知識が求められます。

5. 顧客満足度の測定と改善

顧客満足度(CSAT)やネットプロモータースコア(NPS)などの指標を使って顧客の満足度を定期的に評価します。このフィードバックを基にサービスの改善や新しい機能の開発を行い、さらに顧客満足度を向上させます。

6. アップセルとクロスセル

顧客の利用状況やニーズを把握し、関連する追加機能や上位プラン、他のサービスを提案します。これにより、顧客はさらに多くの価値を享受し、ビジネスは追加収益を得ることができます。

7. チャーン率の低減

解約(チャーン)を防ぐために、リスクの兆候を早期に識別し、適切な対策を講じます。例えば、利用頻度が低下している顧客に対してサポートを強化するなどのアクションを取ります。

8. 顧客データの分析と活用

顧客の利用データを収集・分析し、行動パターンや成功要因を特定します。これにより、個々の顧客に対するカスタマイズされたサポートや、製品の改善に役立てます。

9. 製品開発へのフィードバック

顧客からのフィードバックを収集し、製品開発チームに伝える役割も担います。これにより、顧客のニーズに沿った機能改善や新規機能の開発が可能になります。

10. 顧客の成功事例作成

成功した顧客事例を作成し、共有することで、他の顧客にも成功体験を提供する手助けをします。また、これらの事例はマーケティングや営業活動にも役立ちます。

言い換えれば、カスタマーサクセスの役割は、単なるサポートに留まらず、顧客の長期的な成功を保証するための包括的な取り組みを通じて、顧客と強固な関係を築き、ビジネスの成長に貢献することです。

SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスの業務内容

SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスの業務内容は多岐にわたりますが、以下に主な業務内容を詳しく解説します。

1. オンボーディング

新規顧客の導入支援: サービスの基本設定、アカウントの作成、データのインポートなど、初期導入のステップをサポートします。

トレーニング: 初期トレーニングセッションを実施し、顧客が必要な基本的スキルを習得できるようにします。

2. トレーニングと教育

ウェビナーやワークショップ: 定期的にオンラインセミナーやトレーニングセッションを開催し、製品の利用方法や新機能を紹介します。

ドキュメンテーションの整備: マニュアルやガイド、FAQ、ナレッジベースの記事を作成・更新し、顧客が自己解決できるリソースを提供します。

3. 顧客エンゲージメントとコンサルティング

定期的なチェックイン: 顧客と定期的に連絡を取り、使用状況や課題を確認します。

成功事例の共有: 顧客に対して業界のベストプラクティスや他社の成功事例を紹介し、より効果的な利用方法を提案します。

4. 問題解決とサポート

技術サポート: 顧客が直面する技術的な問題について、専門的な知識を用いて迅速に解決します。

トラブルシューティング: 顧客の課題を深掘りし、根本原因を探求して解決策を提供します。

5. 顧客満足度の測定とフィードバックの収集

調査の実施: ネットプロモータースコア(NPS)や顧客満足度(CSAT)調査を実施し、フィードバックを収集します。

改善策の提案: 収集したフィードバックをもとに、具体的なサービス改善策を提案します。

6. アップセルとクロスセル

追加サービスの提案: 利用状況やニーズに基づき、顧客に対してアップセル(上位プラン)やクロスセル(関連製品)の提案を行います。

セールスチームとの連携: セールスチームと密に連携し、適切なタイミングで提案を行います。

7. チャーン率の低減

リスク顧客の特定: 顧客の利用データを分析し、離脱リスクの高い顧客を早期に特定します。

リテンション施策: リスク顧客に対して個別の対策を行い、継続利用を促進します。

8. データ分析とレポート

利用状況のモニタリング: 顧客の製品利用データを継続的にモニタリングし、行動パターンやトレンドを分析します。

レポート作成: 顧客の成功指標や課題を定期的にレポートにまとめ、社内の関係者に共有します。

9. 製品およびサービスの改善提案

フィードバックの集約: 顧客からのフィードバックを収集し、製品チームや開発チームに提供します。

機能改善の提案: 顧客のニーズを基に、具体的な機能改善や新機能の提案を行います。

10. 顧客の成功事例の作成とマーケティング支援

ケーススタディの作成: 顧客の成功事例を詳細にドキュメント化し、マーケティングや営業活動に活用します。

共同マーケティング: 時には顧客と協力してウェビナーやイベントを開催し、成功体験を共有します。

SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスの業務は、顧客が製品を最大限に活用し、望ましい成果を得るための包括的なサポートとコンサルティングを提供することにより、顧客の成功を実現してビジネスの持続的な成長を支える重要な役割を果たします。

SaaSビジネスへのカスタマーサクセスの導入時のポイント

SaaSビジネスにカスタマーサクセスを導入する際には、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

1. 明確な目標設定

カスタマーサクセスの目的や期待する成果を具体的に設定します。例として、顧客満足度の向上、解約率の低下、アップセルやクロスセルの増加などがあります。

成功の指標となるKPI(Key Performance Indicators)を設定し、チームのパフォーマンスを継続的に評価します。NPS(Net Promoter Score)、CSAT(Customer Satisfaction Score)、解約率、平均収益(ARPU:Average Revenue Per User)などが考えられます。

2. 顧客セグメンテーション

顧客をニーズや利用状況、企業規模などでセグメント別に分類します。これにより、それぞれのセグメントに最適なサポートやエンゲージメント戦略を策定できます。

3. 導入プロセスとトレーニング

明確なオンボーディング計画を立て、新規顧客がスムーズにサービスを利用できるようサポートします。初期設定、トレーニングセッション、初期目標の設定を含めます。

顧客教育のためのマニュアル、動画チュートリアル、ウェビナーなどのリソースを事前に整備します。

4. 定期的なエンゲージメント

定期的に顧客と連絡を取り、使用状況やニーズの確認を行います。これにより、顧客の満足度や問題点を早期に把握できます。

サポートチケットシステム、チャット、メール、電話など、様々なコミュニケーションチャネルを用意し、顧客が気軽に相談できる環境を整えます。

5. 顧客データの収集と分析

顧客の利用データを定期的に収集・分析します。プロダクト利用率、サポートリクエストの頻度、エンゲージメントデータなどが含まれます。

データを基に、成功パターンや解約リスクの高いパターンを特定し、それに基づいて対策を講じます。

6. 顧客フィードバックの活用

NPS調査、顧客満足度調査、直接のフィードバックなどを通じて、広範なフィードバックを収集します。

収集したフィードバックを製品チームや開発チームと共有し、製品やサービスの改善に反映させます。

7. カスタマイズされたサポート

顧客ごとにカスタマイズされたサポートを提供します。特にハイタッチ(高接触)型のサポートが必要な大規模顧客や重要顧客には、専任のアカウントマネージャーを配置すると効果的です。

顧客が直面する問題を自己解決できるように、多様なサポートリソースを提供します。

8. 内部連携の強化

カスタマーサクセスチームが営業、マーケティング、サポート、製品開発チームと密に連携し、顧客に一貫した価値を提供できるようにします。

CRMシステムやプロジェクト管理ツールを活用し、チーム内および関連チームとの情報共有とコラボレーションを促進します。

9. 継続的な教育と改善

カスタマーサクセスチーム自身が最新の情報やスキルを常にアップデートできるよう、定期的なトレーニングを実施します。

ケーススタディや実績を基に、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)のサイクルを回し、カスタマーサクセスプログラムを継続的に最適化します。

カスタマーサクセスの導入は単なるサポート業務を越え、顧客の成功と満足度向上を目指す包括的な戦略です。以上のポイントを押さえ、しっかりと計画を立てて実行することで、顧客が最大の価値を得られるよう支援し、ビジネスの持続的な成長を実現します。

まとめ

本記事では、 SaaSのカスタマーサクセスが注目される理由や役割、導入時のポイントを解説していきました。

カスタマーサクセスは、顧客との関係構築、データ分析、継続的な価値提供がその中心となります。必要なスキルセットには、優れたコミュニケーション能力、問題解決能力、そしてデータリテラシーが含まれます。

実践する際には、効果的な顧客オンボーディング、定期的な顧客レビュー、そして継続的な価値提案とアップセルが重要です。

この記事を書いた人

Operation事業部

有元 咲希

2023年6月中途入社。保険業界で個人向けの保険販売の営業職を経験した後、SNSマーケティングのコンサル業に従事。コンサル業界で今後さらに経験を積みたいと思い、クロス・オペレーショングループに入社。現在は新規事業の営業部署の組織構築やオペレーション改革プロジェクトを担当。趣味はアニメとお笑い。

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