「起業のために資金調達をしたいけれど、そもそもどのような方法があるかわからない…」という方は多いのではないでしょうか。起業の資金調達方法は様々で、事業規模や事業内容などによってもどの方法が適しているかが異なります。
自分に合った資金調達方法の選び方
起業資金の調達方法は自分に合ったものを選ぶべきです。適切な資金調達方法を選ぶことは、ビジネスの成功と持続可能性に直結します。資金調達方法を慎重に選択し、ビジネスの成長を支えるために必要な資金を確保することが重要です。それでは起業資金の調達方法を種類別に解説していきます。
起業資金の目安とは?
起業資金の目安は、業界やビジネスの規模、地域などによって異なります。一般的には以下のような目安があります。
小規模な個人事業やオンラインビジネス
小規模な個人事業やオンラインビジネスは、10万円〜100万円程度で開業できるといわれています。特にオンラインビジネスはPC一台で始められることも多く低コストで始められる場合もあります。
小規模な店舗やサービス業
小規模な店舗やサービス業は、起業に100万円〜1000万円程度かかるといわれています。小規模とはいえ店舗を持つとなると、店舗の内装や設備・備品の購入や設置、在庫の調達や人件費にそれぞれ数十万~数百万かかります。
中規模な事業や製造業
中規模な事業や製造業では、製造設備・機械装置の購入費用、原材料・部品の調達費用、製品テスト・品質管理費用、人件費や運営費用など、1000万円〜1億円程度かかることがあります。
大規模な企業や新規事業展開
大規模な企業の起業では、まず土地・建物、工場やオフィスの設備、機械装置、輸送機器などの資産投資が必要です。加えて研究開発費用・生産設備・生産ラインの構築費用、マーケティング広告費用、人件費など、1億円以上を見込むことが一般的です。
ただし、これらはあくまで一般的な目安であり、実際の起業資金は事業計画や具体的な要素によって大きく変動する場合があります。ビジネスプランを作成し、具体的な費用項目や予想収支を慎重に評価することが重要です。また、運転資金やマーケティング費用、設備投資、人件費など、起業に必要な要素を適切に考慮することも重要です。
起業資金としてお金は借りるべき?借りるべき理由
ビジネスをするときにお金は借りるべきなのでしょうか?借金はいやだという経営者は少なくありません。「借金=悪」という先入観があるためでしょう。しかし、早く成功するためには、お金は借りるべきなのです。逆説的ですが、これが真実です。起業時にお金を借りるべき理由は以下の通りです。
資金不足の解消
起業には初期投資やランニングコストがかかります。自己資金だけでは不足してしまう場合、借入を利用することで必要な資金を確保することができます。
成長の促進
借入によって資金を調達することで、事業の成長を促進することができます。資金を使ってマーケティング活動や設備投資、新商品開発などを行うことで、競争力を高めたり市場シェアを拡大したりすることができます。
機会の活用
時間や機会が限られている場合、借入によって資金を確保することで、有望なビジネスチャンスを活用することができます。競合他社よりも早く市場に参入するために必要な資金を借りることで、ビジネスの成功確率を高めることができます。
リスク分散
自己資金だけに依存すると、起業時のリスクが大きくなります。借入を活用することでリスクを分散し、自己資金と借入資金を組み合わせることで起業の安定性を向上させることができます。
ただし、借入には返済義務や利子の支払いが伴います。起業家は借入のリスクを理解し、返済計画を十分に立てる必要があります。また、借入には審査や手続きが必要な場合もありますので、時間と労力をかけることも覚悟しておく必要があります。
起業の資金の主な調達方法とは?
起業時に使える資金調達の方法はたくさんありますが、大きくは次の4つに分類することができます。
1.出資
…自己資金やベンチャーキャピタル(VC)、エンジェル投資家など
2.個人借入
…銀行の個人ローンや知人からの借入など
3.融資
…制度融資、銀行や信用金庫、公庫など
4.補助金・助成金
…政府からの補助金など
ここからはそれぞれの資金調達方法について、概要とメリット・デメリットを解説していきます。自身の起業する会社の事業規模や事業内容などに合わせて、適した方法を判断していただければと思います。
起業の資金調達方法1:出資
起業の資金調達方法の1つ目は「出資」です。出資による起業の資金調達方法には、以下のような方法があります。
エンジェル投資
個人やグループが起業家に対して出資し、資金と経営支援を提供する方法です。エンジェル投資家は、起業家のビジョンや成長潜在力に魅力を感じ、株式や出資契約に基づいて資金を提供します。
メリット
・出資までのスピードが速い
・返済に猶予がある
・エンジェル投資家の経営アドバイス、顧客やビジネスパートナー等の紹介を期待できる
デメリット
・多額の出資は難しい
・起業家の保有株比率が下がる
・起業直後の資金調達は期待しづらい
・経営への自由度が下がる
VCやエンジェル投資家などの投資家は、保有した株の価値が上がることで利益を得るので、出資先へのアドバイスを行う場合があります。事業拡大としては大きなメリットとなるので、出資を受けたいと考える起業家は大勢います。彼らがどのような思考で投資を行うのかがわかれば、出資してもらうための対策ができるはずです。
ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタルファンドは、成長性の高いスタートアップ企業に対して出資を行います。ベンチャーキャピタルは、起業家に資金を提供するだけでなく、経営支援やネットワークの提供なども行います。
メリット
・VCの経営アドバイス、顧客やビジネスパートナー等の紹介を期待できる
・上場に向けた短期での成長が可能になる
デメリット
・起業直後の資金調達は期待しづらい
・起業家の保有株比率が下がる
・ベンチャーキャピタルの経営方針に従う必要がある
クラウドファンディング
インターネット上で多くの人々から資金を集める方法です。起業家は、プロジェクトやビジネスのアイデアをオンラインプラットフォームに投稿し、資金提供者からの寄付や報酬を受け取ります。最近ではテレビCMが頻繁に放送されるほど身近になってきましたが、それに伴ってプロジェクトの数も増えてきたこともあり、特徴的な商品・サービスや強い共感を呼ぶようなストーリーがないと資金調達を行うことが難しくなっています。
メリット
・大きなリスクなくチャレンジできる
・テストマーケティングの場にできる
・起業前から全国各地でファンを育成することができる
デメリット
・強い特徴やストーリーがないと資金調達が難しい
・目標金額に達成できない恐れがある
株式公開(IPO)
成長した企業が株式市場に上場し、一般の投資家から資金を調達する方法です。株式公開によって企業の株式を売却し、その資金を活用することができますが、株式市場への上場には厳しい条件と手続きが必要です。
メリット
・株主が分散しないので大きな出資が期待できる
・出資元企業の協力が期待できる
デメリット
・出資元に経営権を握られてしまうリスクがある
・経営の自由度が低くなる
自己資金
資金調達を考える前に、まず起業家の個人資産である自己資金を資本として差し入れ、事業をはじめるのが基本です。自らの資金を事業の資金に充てるのも、出資の形をとった資金調達方法の一つといえるでしょう。
メリット
・経営権を保持でき、経営の自由度が高い
・金利負担がない
・資金調達先とのトラブルのリスクがない
デメリット
・資金量が限られる
・事業清算をした場合、自分の資産を失うことになる
これらの出資による資金調達方法は、起業家がビジネスの成長や拡大に必要な資金を調達するための手段として利用されます。ただし、出資者との関係や所有権の譲渡、返済条件などを考慮し、適切な出資方法を選択する必要があります。
起業の資金調達方法2:融資
起業の資金調達方法の1つ目は「融資」です。融資による起業の資金調達方法は、金融機関から資金を借りる方法です。以下に簡潔に説明します。
政府支援制度
政府が設けた支援制度を活用して融資を受ける方法です。例えば、起業者向けの低金利融資制度や補助金制度があります。政府機関や地方自治体が提供する情報を参考にし、条件に合致する支援制度を利用できます。
メリット
・低いコストで資金を調達することができる
・ビジネス支援やアドバイスも受けることができる
デメリット
・選考に通過するためには競争力のある申請書を用意する必要がある
・条件により自由度が下がることがある
・制度の変更や廃止のリスクがある
マイクロファイナンス
小規模な起業家や事業者に対して、小口の融資を提供する機関です。マイクロファイナンス機関は、従来の金融機関では融資が難しい起業家に対して資金を提供し、経営支援も行います。
メリット
・小額からの融資が可能である
・煩雑な手続きや担保の要求が少なく迅速に資金を得ることができる
・経営サポートやアドバイスが受けられることもある
デメリット
・利息や手数料が高く設定されていることがある
・返済期間や条件が高く設定されていることがある
制度融資
制度融資は、政府や地方自治体、金融機関などが設けた特定の制度やプログラムを通じて起業家や中小企業に対して資金を融資する方法です。これらの制度は、起業や事業の成長を促進し、経済の活性化を図るために設けられています。
メリット
・創業前でも申込みできる
・無担保・無保証でも借りられる
・行政が支払利息、保証料の一部補助をしてくれる場合がある
・経営相談にも乗ってくれる
デメリット
・申込みから実行まで時間がかかる事が多い
・支払利息とは別に保証料の負担が発生する
融資による資金調達は、起業家が返済計画を立て、金融機関との契約や条件を守ることが重要です。また、融資金利や返済スケジュール、保証人の有無などを慎重に評価し、自身のビジネスに適した融資方法を選ぶことが大切です。
起業の資金調達方法3:個人借入
起業の資金調達方法の3つ目は「個人借入」です。個人借入による起業の資金調達方法は、自身や親族、友人からの借入を利用する方法です。以下に簡潔に説明します。
銀行ローン
銀行から起業資金を借りる方法です。起業家は、ビジネスプランや財務状況を提出し、審査を受けます。銀行は返済能力や信用度を評価し、融資額や利率、返済スケジュールを決定します
メリット
・個人の信用で容易に申し込むことができる
・手続きが簡単
デメリット
・本来は起業や事業用の用途ではない
・利息が高い
親族・友人からの借入
親族や友人から資金を借りる方法です。信頼関係のある人々からの借入は、金利が低い場合や柔軟な返済条件が付けられる場合もあります。
メリット
・資金調達時に審査が要らない
・他人資本でも経営権を保持しやすい
・自由な条件で契約をしやすい
デメリット
・身内とリスクを共有することになる
・専門家のアドバイスなどは期待できない
・うまくいかなかった際にトラブルになる可能性がある
個人借入による資金調達は、金融機関の審査や手続きを経ずに資金を調達できる利点があります。ただし、返済計画や利子の支払い、関係の維持などについて事前に明確な合意をすることが重要です。また、個人借入は個人的な関係や信頼に基づくものであるため、ビジネスの成功や失敗が関係に影響を及ぼす可能性もあります。適切な契約書や法的な助言を得ることで、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
起業の資金調達方法4:補助金・助成金
起業の資金調達方法の4つ目は「補助金・助成金」です。補助金・助成金による起業の資金調達方法は、政府や関連機関からの資金支援を受ける方法です。特定の条件や目的に合致する場合、事業計画や申請書を提出することで補助金や助成金を受けることができます。以下に簡潔に説明します。
メリット
・起業前・起業後どちらでも申請可能な場合がある
・基本的に返済不要
・助成金の場合には申請すれば高確率で受給ができる
・自由な条件で契約をしやすい
デメリット
・補助金は後払いの為、つなぎ資金を用意する必要がある
・補助対象経費の種類は限定されている
・将来、収益が上がった場合は補助金額を上限に返済することもある
・常に募集しておらず、申込み期間がある
・採択率は直近で15%程度
補助金・助成金による資金調達は、起業家が特定の条件や目的に合致し、申請書類やビジネスプランを提出することが必要です。各補助金や助成金の申請期間や手続きに注意し、応募に必要な書類や要件を満たすことが重要です。また、補助金や助成金の利用は限定的な期間や用途が設けられることがあるため、条件や制約を確認し適切に活用することが大切です。
起業の資金調達を成功させるポイント
起業の資金調達を成功させるためのポイントを以下にまとめます。
綿密なビジネスプランの作成
資金提供者に対して魅力的なビジネスプランを提供することが重要です。ビジネスの目的や戦略、市場の需要や競合状況、資金の使い道と返済計画などを明確に示しましょう。ビジネスの将来性と成長ポテンシャルを具体的にアピールすることで、資金調達の成功確率を高めることができます。
適切な資金調達手段の選択
資金調達手段は多岐にわたりますので、自身のニーズとビジネスに最適な方法を選択しましょう。自己資金の投入、個人や家族からの借入、投資家やベンチャーキャピタルからの出資、銀行融資、補助金・助成金の活用など、適切な資金調達手段を選ぶことが重要です。
強固なビジネスネットワークの構築
起業の資金調達においては、信頼性と信用が不可欠です。強固なビジネスネットワークを構築しましょう。業界の専門家やメンター、起業家コミュニティ、起業支援機関などの関係者とのつながりを作り、信頼を築いていくことが重要です。信頼できる人々からの紹介や推薦は、資金提供者に対して大きな影響力を持ちます。
これらのポイントを意識して資金調達に取り組むことで、起業の資金調達を成功させる可能性を高めることができます。ただし、個別の状況や業界によって異なるため、事前の情報収集やアドバイスの受け取りを行いながら、最適な戦略を構築してください。
起業の資金調達の際に気を付けたいこと
起業の資金調達時に気を付けるべきポイントは、リターンの見込みとリスクのバランスを考慮することです。資金提供者は投資した資金のリターンを期待しますが、同時にリスクも評価します。起業者はリターンの見込みを示しつつ、リスク管理策や将来の成長戦略を具体的に説明することで、資金提供者の関心を引くことが重要です。
まとめ
本記事では、起業時の資金調達の方法について解説し、その種類やポイントについて紹介しました。起業時の資金調達方法選定は重要な決断ですが、自信に合った方法を選ぶことで企業の成長や問題解決に大きく貢献することができます。是非、本記事を参考にして、自社に最適な起業時の資金調達方法を選んでください。
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