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SDGsとは?概要や企業での取組事例をわかりやすく解説

最終更新日:2024.10.16作成日:2023.07.31

SDGs(持続可能な開発目標)とは、国連が採択した17のグローバルな目標で、貧困削減や健康・教育の普及など持続可能な社会を目指します。企業も重要な役割を果たし、再生エネルギー導入や地域社会との協力など、SDGsに向けた取り組みが増えています。

本記事では、SDGsについて概要や企業での取組事例をわかりやすく解説します。

SDGsとは?

SDGs(エス・ディー・ジーズ:Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)とは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓うものであり、17の目標・169のターゲット・232の指標から構成されています。発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本の企業においても取り組みが進んでいます。

SDGsが注目されるようになった社会背景

SDGsが注目されるようになった背景には、地球の資源を惜しみなく使うことを前提とした経済・社会の発展は、近い将来に限界が訪れるという危機感がありました。地球上の資源の消費が持続不可能なペースで進んでいることから、これ以上の資源の乱用が続けば地球環境や生態系が大きな影響を受けることが予測されています。このような状況を背景に、1987年に「環境と開発に関する世界委員会」が報告書で「持続可能な開発」について提唱したことが、現在のSDGsの根底となる概念の広がりにつながりました。

その後、2001年にSDGsの前身であるMDGsが策定され、2015年を目標達成の期限として活動が進められました。MDGsでは「極度の貧困と飢餓の撲滅」を含めた8つのゴールが設定されていましたが、途上国における問題解決に目を向けた取り組みとなることが多く、実際に推進するのは国やNGO(非政府組織)が主体となっていました。しかしこの時、企業や個人の積極的な関与が課題として挙げられました。特に、企業が自らの事業活動においてSDGsに貢献する取り組みを進めることは、当初は十分に認識されていませんでした。

日本企業では、CSR(企業の社会的責任)において、事業活動を通じて社会に貢献する意義が認識されています。CSR活動には、地域社会への支援や環境への配慮など、社会的な視点からの取り組みが含まれます。しかし、利益を還元することが主な目的とされる場合もあり、業績が悪化した際にはCSR活動の優先度が下がるケースも見られました。これに対して、SDGsは単なる社会への還元を目的とするものではなく、事業活動そのものに「持続可能であること」を組み込む点が大きな違いです。SDGsは企業にとって、CSRとは異なるアプローチを要求し、事業活動そのものの持続可能性を考える必要があるため、注目を集めているのです。

SDGsとESGとの違い

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉です。企業の長期的な成長を目指すには、ESGの三つの観点が必要であることが世界的にも周知されています。具体的に、環境への配慮(Environment)、社会的な側面への貢献(Social)、経営・ガバナンスの質の向上(Governance)が、企業の持続的な成長と価値創造に欠かせない要素として認識されています。これらの観点から企業を総合的に分析し、ESG要素に優れた企業へ投資することを「ESG投資」と呼びます。

ESGは、2006年に当時の国連事務総長だったコフィー・アナン氏が金融業界に提唱した「責任投資原則(PRI)」の中で、投資を判断する際の観点として提唱されました。これにより、投資家は単なる収益だけでなく、企業の持続可能性や社会的な影響を考慮した投資を行う意識が高まりました。ESGは、企業の持続的な成長に対する投資家の期待や関心を反映した指標として、金融・投資界で広く受け入れられています。

ESGとSDGsの根源が類似していることもあり、近年はセットで注目される傾向にあります。しかし、ESGは企業の経営において顧客・従業員・株主・取引先・競合他社・地域社会・行政機関などのステークホルダーに対する配慮を重視し、企業の長期目標として位置づけられます。一方のSDGsは、企業だけでなく国や地方団体を含む持続可能な開発目標です。ESGは企業が日々の事業活動を通じて社会に貢献し、持続可能な経営を実践することで、将来的なSDGsの達成に貢献する要素として位置づけられています。

SDGs「17の目標」について解説

SDGsは17の目標に分けられており、さらに169のターゲット、その下には232の指標があります。17の目標それぞれの概要を解説します。

1.貧困をなくそう(あらゆる場所・あらゆる形態の貧困を終わらせる)

7つのターゲットに分けられ、主に貧困層の半減・保護、貧困撲滅のための各種取り組みを行うものです。

2.飢餓をゼロに(食料の安定確保と栄養状態の改善・持続可能な農業を推進)

8つのターゲットに分けられ、飢餓や栄養失調の撲滅を目指すとともに、小規模食料生産者の農業生産性や所得倍増、持続可能な生産システムの確保を目指します。このほか、農村インフラや農業研究・普及サービス、植物・家畜遺伝子バンクへの投資拡大など、開発途上国の農業生産強化を図ることも挙げられています。

3.すべての人に健康と福祉を(健康的な生活の確保・福祉の促進)

13のターゲットに分けられ、妊産婦や新生児の死亡率の削減、伝染病の根絶、感染症への対処、非感染性疾患(NCD)による若年死亡率の減少などが挙げられています。このほかにも薬物乱用の防止や治療強化、交通事故の死傷者半減、大気・水質など各種汚染による死亡・疾病件数の大幅削減などがあります。

4.質の高い教育をみんなに(公正で質の高い教育の確保・生涯学習の機会促進)

10のターゲットに分けられ、無償かつ公正で質の高い初等・中等教育の確保、就学前教育へのアクセス、全ての人が安価で質の高い技術・職業教育や高等教育を受ける平等な機会の獲得が挙げられています。また、雇用や起業などに必要な技能を持った人の割合の増加、教育におけるジェンダー格差の排除などがあります。

5.ジェンダー平等を実現しよう(ジェンダー平等の達成・女性や女児の能力強化)

9つのターゲットに分けられ、性差別の撤廃、女性への暴力排除や有害な慣行の撤廃、女性のエンパワーメント促進のための実現技術の活用強化などが挙げられています。

6.安全な水とトイレを世界中に(水と衛生の利用可能性・持続可能な管理の確保)

8つのターゲットに分けられ、安全・安価な飲料水を平等に利用できるようにするための整備、下水・衛生施設の整備、水不足に悩む人の数の大幅減少、水資源管理、水に関連する生態系の保護・回復などがあります。

7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに(持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保)

5つのターゲットに分けられ、安価で信頼できる現代のエネルギーサービスを普遍的に利用できることのほか、再生可能エネルギーの割合拡大、世界全体で見たエネルギー効率の改善率倍増、開発途上国におけるインフラ拡大・技術向上などが挙げられています。

8.働きがいも経済成長も(持続可能な経済成長・働きがいのある人間らしい雇用の促進)

12のターゲットに分けられ、一人当たりの経済成長率の持続、高いレベルでの経済生産性達成、雇用創出やイノベーションを支援する開発重視型政策の促進と中小企業の設立・成長の奨励、就労・就学・職業訓練などを行っていない若者の割合減少、持続可能な観光業促進のための政策立案などがあります。

9.産業と技術革新の基盤をつくろう(強靱なインフラ構築・持続可能な産業化の促進・イノベーションの推進)

8つのターゲットに分けられ、持続可能で強靭なインフラ開発と安価かつ公平な利用の確保、開発途上国でのインフラ開発促進、後発開発途上国における情報通信技術へのアクセス向上などが挙げられています。また、GDPに占める産業セクターの割合増加、資源利用効率の向上、クリーン技術の導入拡大といった項目があります。

10.人や国の不平等をなくそう(各国内および各国間の不平等を是正)

10のターゲットに分けられ、所得下位40%の所得成長率について国内平均を上回る数値を漸進的に達成・維持、機会均等の確保や成果不平等の是正、税制や賃金などの平等拡大を達成することなどが挙げられています。

11.住み続けられるまちづくりを(持続可能な都市・人間居住の実現)

10のターゲットに分けられ、スラムの改善、交通の安全性改善と女性・子ども・高齢者・障がい者などへの配慮、災害による死者や被災者の削減、環境に悪影響をもたらす廃棄物管理への配慮などが挙げられています。このほか、世界文化遺産・自然遺産の保護も組み込まれています。

12.つくる責任つかう責任(持続可能な生産消費形態の確保)

11のターゲットに分けられ、天然資源の持続可能な管理や効率的利用、再利用などによる廃棄物排出量の大幅削減のほか、小売・消費レベルでの食料廃棄を半減させて食品ロスを防ぐことなどが挙げられています。

13.気候変動に具体的な対策を(気候変動の影響を軽減するための緊急対策)

5つのターゲットに分けられ、気候変動対策を国の政策・戦略・計画に盛り込むこと、気候変動の影響に対応するための教育・啓発、制度の改善などが盛り込まれています。

14.海の豊かさを守ろう(海洋や海洋資源の保全・持続可能な形での利用)

10のターゲットに分けられ、海洋汚染の防止・大幅削減、海洋や沿岸の生態系の回復活動、海洋酸性化の影響を最小限化することなどが挙げられています。

15.陸の豊かさも守ろう(陸域生態系や森林の保護と回復・持続可能な形での利用)

12のターゲットに分けられ、陸域の生態系の保全と回復、森林減少の阻止と回復、砂漠化への対処や劣化した土地と土壌の回復、遺伝資源への適切な対応などがあります。

16.平和と公正をすべての人に(平和で包摂的な社会の促進・司法の平等利用・透明性の高い制度の構築)

12のターゲットに分けられ、暴力および暴力に関連する死亡率の減少、子どもへの虐待撲滅、組織犯罪の根絶、汚職や贈賄の大幅減少、公共機関の透明性の確保、司法の平等な利用などが挙げられています。

17.パートナーシップで目標を達成しよう(実施手段の強化とグローバル・パートナーシップの活性化)

19のターゲットに分けられ、ODA(政府開発援助)におけるコミットメントの実施、開発途上国への追加的資金源の動員や技術支援などが挙げられ、世界的なマクロ経済の安定が求められています。

企業でのSDGs取組事例

企業活動においても、経営リスクを回避するとともに、新たなビジネスチャンスを獲得するためのツールとしてSDGsの活用が注目を集めています。

ここでは、外務省HPに掲載されている企業でのSDGs取組事例をご紹介します。

産業機械メーカー

茨城県にある産業機械メーカーでは、 かつて主流であったフィランソロピー型のCSRから⼀歩進み、ビジネス界は事業を通じて収益を上げつつ社会課題の解決に資することを求められているという世界の潮流を認識していました。そこで、柔軟に考え⽅を適応させながらSDGsの17のゴール、169のターゲットを⾒ると、⾃社ですでに取組済の項⽬や⾃社製品が貢献する項⽬が数多くあり、社内事業・業務をSDGs/ESGの枠組みで捉え直しています。

環境への取組では、特に「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に着目し、ISO14001を取得。全社的な環境マネジメントを実施するとともに、太陽光発電を行い再生利用可能エネルギーの利用を促進しました。

また、木材破砕機などを開発し廃木材のリサイクルを推進するなど、SDGsのフレームワークを通じて、⾃社が新たに取り組み可能な社会課題の領域を⾒つけ、新規事業領域創出を考えるヒントとしています。

ウォーターサーバーレンタル業

埼玉県にあるウォーターサーバーレンタル業の企業では、ウォーターサーバーがプラスチックボトルを不要とする環境面での優位性に気づき、コア事業を同商品のレンタル事業に転換しました。また、地方自治体と使い捨てプラスチック削減に向けた連携協定を締結し、マイボトルに給水を呼びかけるプロジェクトを推進しました。

具体的には、使い捨てプラボトルをマイボトル(水筒)で代替することを呼びかけ、2022年6月度に8万1000本の水筒を配布。さらに61の地方自治体との連携協定の下、誰もが給水できる給水スタンドを1669台設置しました。

ウォータースタンド設置台数から使い捨てプラボトル削減本数・CO2排出抑制量を推計し、使い捨てプラボトル削減本数は8846万本、CO2排出抑制量は9297t-CO2(2022年6⽉度)となりました。また、ステークホルダーとのパートナーシップが拡⼤し、教育機関においてSDGsに関する出張授業、地⽅⾃治体が開催するSDGsに関するミーティングなどでの登壇を実現するなど、ビジネスチャンスを広げています。

まとめ

本記事では、SDGsについての意味や企業での取組事例をご紹介しました。企業においてもSDGsは持続可能な事業を続けるために重要な考え方です。ぜひ本記事を参考にしてみてください。