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M&Aとは?目的やメリット、手法や流れなどを分かりやすくご説明いたします!

最終更新日:2023.08.07作成日:2023.07.31

M&Aとは

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、「合併」と「買収」の略称であり、企業の経営戦略の一環として行われる重要な取引の形態です。

合併(Mergers)

合併とは、2つの企業が合意のもとで合同して1つの新しい企業を創設する取引のことを指します。両社の合意に基づき、統合された新会社が誕生します。合併は、組織の統合や規模の拡大、相乗効果の追求などを目的として行われる場合があります。

買収(Acquisitions)

買収とは、1つの企業が他の企業を経営権を持つ形で取得する取引のことを指します。買収を行う企業(買収会社)は、対象企業の株式を取得したり、企業の全体的な資産と事業を引き継いだりすることで対象企業を吸収します。買収によって、競合他社の排除や新たな市場への進出、技術や人材の獲得などを目的として行われることがあります。

M&Aは、企業が成長戦略を進める際や市場競争力を向上させる際に有用な手段とされています。M&Aを通じて、企業は市場での地位を強化し、新たな事業領域への展開、競合他社の買収、合理化・効率化などを実現することができます。ただし、M&Aは戦略的な意思決定や企業統合に関わる複雑なプロセスであるため、リスクを適切に評価し、計画的な実行が求められます。

M&Aの歴史

M&Aは、経済史上古くから存在する取引の形態です。

下記、M&Aの歴史の一部をご紹介いたします。

19世紀~20世紀初頭

M&Aの初期の例は、19世紀に遡ります。特に鉄道産業や石油産業など、産業革命期には多くの合併や買収が行われました。これは企業の拡大と競争力の確保を目指したものでした。例えば、米国の企業であるスタンダード・オイルの創業者であるジョン・D・ロックフェラーは、石油産業で多くの企業の合併を進め、石油業界での支配的な地位を築きました。

20世紀中盤

第二次世界大戦後、経済のグローバル化が進展する中で、多国籍企業の成長とともにM&Aも増加しました。大企業は競争力を高めるために合併や買収を活用し、新たな市場に進出することが一般的となりました。

1980年代~現代

1980年代には、アメリカでの「企業活性化運動」として知られる時期がありました。これは、企業の経営陣や株主による企業の株式買収を促進する政策や法律が実施された時期で、大企業の経営再建や企業価値の向上を目指しました。また、この時期以降、金融市場の発展やグローバルな資本流動性の増加もM&Aの活発化に寄与しました。

テクノロジー産業の台頭

近年では、特にテクノロジー産業でのM&Aが目立ちます。テクノロジー企業は急速に進化する市場に対応するため新技術の獲得やスタートアップ企業の買収を行い、市場シェアの拡大や新たな事業領域の開拓を行っています。

M&Aの歴史は、経済や産業の発展とともに変化してきました。M&Aは企業の成長や競争力の確保に欠かせない戦略の一つとして、現代のビジネスにおいても重要な役割を果たしています。

M&Aの目的

M&Aの主な目的は、企業の経営戦略や成長戦略に基づいて行われます。

下記、M&Aの一般的な目的をいくつかご紹介いたします。

成長と拡大

新たな市場への進出や事業領域の拡大を目指すためにM&Aを実施する場合があります。競合他社の買収や提携により、既存事業の補完や新たな収益源を見つけることで、企業の成長を促進します。

競争力の強化

M&Aによって企業の競争力を向上させることが目的となることがあります。競合他社の買収により、市場シェアを拡大したり、競合他社の強みを取り入れることで、業界内での優位性を確立します。

新技術や知識の獲得

テクノロジーやイノベーションが重要な産業において、新技術や知識を獲得するためにスタートアップ企業の買収が行われることがあります。これにより、企業は競合他社よりも先進的な製品やサービスを提供することが可能になります。

リソースと効率性の向上

M&Aによって統合された企業は、リソースの統合や効率的な業務プロセスの実現を図ることができます。これにより、コスト削減や生産性の向上を実現し、収益の向上を図ることができます。

リスク分散

M&Aによって、企業は自社のリスクを分散させることが可能です。特定の市場や地域に依存しない多様な事業ポートフォリオを構築することで、企業の安定性を高めることができます。

これらはM&Aの一般的な目的であり、企業は自社の戦略やビジョンに合わせて適切なM&Aの目的を定め、戦略的な判断を行うことが重要です。ただし、M&Aは複雑なプロセスであり、リスクを適切に評価し、戦略的な計画と実行が求められます。

M&Aの必要性

M&Aの必要性は、企業が成長戦略を遂行する上でさまざまな理由により生じます。

下記、M&Aの必要性について詳しくご紹介いたします。

成長と拡大

新たな市場に参入したり、事業領域を拡大するためには、M&Aが有効な手段となります。自社だけでは新しい市場に参入するのが難しい場合や、競合他社を買収することで既存事業を拡大することが考えられます。

競争力の強化

競争が激化している市場において、M&Aを通じて競合他社を統合することで、企業の競争力を向上させることができます。市場シェアの拡大や技術・人材の獲得などが、競争上の優位性を確立する手段となります。

テクノロジーとイノベーション

テクノロジー産業においては、新しい技術や知識の獲得が重要です。スタートアップ企業の買収により、企業は最先端の技術やイノベーションを取り入れることができます。

リソースと効率性の向上

M&Aによって統合された企業は、リソースの統合や業務の効率化を図ることで、コスト削減や生産性の向上を実現することができます。

リスク分散

特定の市場や地域に依存せず、多様な事業ポートフォリオを構築することで、企業はリスクを分散させることができます。特定の事業にリスクがある場合、他の事業での安定収益が補完されることになります。

企業価値の向上

M&Aを適切に実行することで、企業の業績や将来の成長性が向上し、企業価値が向上する可能性があります。これにより、株主や投資家への利益を最大化することができます。

これらの理由により、M&Aは企業の成長や競争力向上、市場の変化に適応するための重要な手段となります。ただし、M&Aは戦略的な判断と実行力が必要であり、リスク管理と事前の評価が欠かせません。

M&Aのスキームとプロセスについて

M&Aのスキーム(枠組み)とプロセスは、一般的な流れとして下記のようになります。

スキーム(枠組み)

M&Aのスキームは、合併と買収の方法や条件、および実現するための戦略を定めるものです。スキームは企業の戦略や目的に応じて異なりますが、一般的なステップとして下記のようなものがあります。

ターゲットの選定

M&Aの対象となる企業(ターゲット企業)を選定します。市場調査や戦略的な評価を行い、合併または買収の対象として適した企業を特定します。

評価と交渉

ターゲット企業の評価を行い、価値を判断します。その後、価格や条件などについての交渉が行われます。

デューデリジェンス

合併または買収を実行する前に、ターゲット企業の経済的、法的、税務、環境などの側面を詳細に調査します。デューデリジェンスにより、リスクの特定と評価が行われます。

合意書締結

価格や条件が合意に達したら、合併契約書または買収契約書が締結されます。契約書には取引の詳細が明記され、合意内容を実現するための手続きが記載されます。

承認と実行

契約書が作成されたら、関連する法的手続きと規制の承認を得るために、政府機関や規制当局に提出されます。合意した条件が履行され、取引が実行されます。

プロセス

M&Aのプロセスは、一般的な流れとして下記のようになります。ただし、実際のM&Aは企業や取引の規模によって異なる場合があります。

企業の目標と戦略の設定

M&Aのプロセスは、まず企業が成長戦略や戦略的目標を設定する段階から始まります。企業は自社のニーズや課題を分析し、合併や買収を通じて解決できる可能性があるかを検討します。

ターゲット企業の選定と評価

M&Aの成功の鍵は、適切なターゲット企業の選定です。市場調査や競合他社の評価を行い、合併または買収の対象として適した企業を特定します。また、ターゲット企業の評価を行い、企業の価値を判断します。

デューデリジェンス(DD)の実施

デューデリジェンスは、M&Aの最も重要なステップの一つです。ターゲット企業の経済的、法的、税務、環境などの側面を詳細に調査します。デューデリジェンスにより、リスクを特定し、契約条件に影響を与える情報を収集します。

価格交渉と契約締結

ターゲット企業の評価が終了すると、価格や条件についての交渉が行われます。双方の合意に達したら、合併契約書または買収契約書が締結されます。契約書には取引の詳細が明記され、合意内容を実現するための手続きが記載されます。

法的手続きと規制当局の承認

契約書が作成されたら、M&Aの実行には関連する法的手続きが必要となります。また、特定の取引には規制当局の承認が必要な場合もあります。

合併または買収の完了と統合

契約書が承認され、必要な手続きが完了したら、合併または買収が完了します。合併された企業は統合され、新しい組織として運営されることになります。統合プロセスは円滑に進むように計画と実行が求められます。

M&Aのプロセスは、多くの関係者(経営者、法律顧問、会計士、銀行家など)が関与する場合があります。プロセスの進行には時間とリソースが必要であり、成功するためには戦略的な計画とスキルが重要です。

M&Aのメリットとデメリット

M&Aのメリットとデメリットについて、主に下記が挙げられます。

メリット

成長と拡大

M&Aにより、新たな市場への進出や既存事業の拡大が可能になります。これにより、企業は成長を促進し、市場での地位を強化できます。

競争力の強化

競合他社の買収により市場シェアを拡大し、競合他社の強みを取り入れることで企業の競争力が向上します。

テクノロジーと知識の獲得

M&Aを通じて、新しい技術や知識を獲得することができます。特にテクノロジー産業では、スタートアップ企業の買収により、最先端の技術やイノベーションを取り入れることが可能です。

シナジーの創出

M&Aにより、統合された企業はシナジーや経済スケールを実現し、コスト削減や効率性の向上を図ることができます。

リスク分散

複数の事業を持つことにより、特定の市場や地域に依存しない多様な事業ポートフォリオを構築することができます。また、リスクを分散させることで、企業の安定性を高めることができます。

デメリット

適応と統合の難しさ

統合された企業の違いや文化の相違、組織の適応などが問題となる場合があります。統合プロセスが円滑に進まないと、事業継続や成果の実現が困難になります。

資金と借入

M&Aには大きな費用がかかる場合があります。多くの場合、追加の資金調達や借入が必要となるため、企業の負債が増加する可能性があります。

成果の不確実性

M&Aの成功は確約されたものではありません。デューデリジェンスでは全てのリスクを特定できないこともありますし、戦略的な判断を誤った場合、期待通りの成果を得ることができない場合もあります。

マーケット反応

M&Aの発表は市場や株主に影響を与えることがあります。不安定なマーケット環境での取引では、株価の変動や投資家の反応に注意する必要があります。

規制と合意

M&Aはしばしば規制当局の承認が必要となります。また、合意が成立するまでに長期間かかる場合もあります。M&Aの成功には、慎重な計画と実行が不可欠です。リスクを適切に評価し、戦略的な判断を行うことが重要です。

M&A仲介会社やプラットフォームに支払う手数料・費用

M&A仲介会社やプラットフォームに支払う手数料や費用は、取引の規模や業界によって異なりますが、一般的なものとして下記のような項目があります。

成功報酬

M&A仲介会社やプラットフォームは、取引が成立した際に成功報酬として一定の割合の手数料を受け取ります。一般的に取引価格の一定割合(例:1%〜5%)が成功報酬として支払われることがあります。ただし、規模の大きな取引や特定の業界では、成功報酬の割合が交渉されることもあります。

事前費用

M&A仲介会社やプラットフォームは、取引の前段階で一定の費用(事前費用)を受け取る場合があります。これは、調査や評価などの事前準備やデューデリジェンスの費用をカバーするために支払われるものです。

経費

M&A仲介会社やプラットフォームは、取引に関連する経費(例:交通費、宿泊費、コンサルティング料など)を別途請求する場合があります。これらの経費は、取引の進行や必要な調査にかかる費用をカバーするために支払われます。

その他の費用

取引に関連して特定のサービスやアドバイスが必要な場合、別途費用が発生することがあります。例えば、法律顧問や会計士などの専門家のサービスを利用する際には、専門家への料金が別途発生することがあります。

これらの手数料や費用は、M&Aの取引の複雑さや規模に応じて異なるため、事前に交渉や契約内容を十分に把握しておくことが重要です。企業は、M&A仲介会社やプラットフォームとの契約において、料金や費用の詳細な条件を明確に定めることが重要です。

M&Aで発生する税務

日本でM&A(合併と買収)が行われる際には、さまざまな税務上の取扱いがあります。

下記、日本でM&Aにおける主な税務についてご説明いたします。

法人税

法人税は、日本の法人が得た所得に対して課税される税金です。M&Aにより、企業が合併または買収された場合、売却された企業の損益や資産の評価などによって税務処理が変わることがあります。法人税は、合併や買収の際には特に注意が必要な税金の一つです。

譲渡所得税

譲渡所得税は、資産や株式などを売却した際に発生する税金です。M&Aにおいて、企業や株式の売却が行われる場合、譲渡所得税が課税される可能性があります。特に個人や外国法人の場合、税率や課税対象の取扱いが異なることに注意が必要です。

法人内再編税制

日本には法人内再編税制という特別な税制があり、子会社が親会社に対して株式を譲渡する場合などに適用されることがあります。この税制は、内部での会社の再編や統合において税金の非課税措置を提供するものであり、M&Aにおいて税務上のメリットを享受することができます。

消費税

消費税は、商品やサービスの提供に対して課税される税金です。M&Aにおいては、売却される企業が消費税の課税対象となることがあります。また、M&Aによる企業の統合や再編に伴い、消費税の特例措置が適用される場合もあります。

これらは一般的な税務上の取扱いの一部であり、具体的なM&Aの取引内容や条件によって税務処理が異なります。M&Aにおいては、税務アドバイザーや専門家の助言を受けることが重要であり、税務上のリスクを最小限に抑えるためにも事前の計画と対応が必要です。

M&Aの成功事例と失敗事例

M&Aの成功事例と失敗事例について、それぞれいくつかご紹介いたします。

成功事例

DisneyとPixarの合併(2006年)

DisneyがアニメーションスタジオのPixarを買収したことで、ディズニーはアニメーション映画の制作力を強化し、成功した映画作品を生み出すことができました。Pixar作品のヒットにより、ディズニーのクリエイティブなポートフォリオが拡大し、市場での競争力が向上しました。

FacebookとInstagramの買収(2012年)

FacebookがInstagramを買収したことでSNSのユーザー数が飛躍的に増加し、Facebookはモバイルプラットフォームの市場リーダーとなりました。Instagramの成長を活かし、Facebookは新たなユーザー層にアプローチし、広告収益を拡大することに成功しました。

GoogleとYouTubeの買収(2006年)

GoogleがYouTubeを買収したことで、オンライン動画の配信プラットフォームを手に入れました。YouTubeの成長により、Googleはオンライン広告市場の支配的な地位を確立し、収益を大幅に増加させました。

失敗事例

AOLとTime Warnerの合併(2001年)

インターネットサービスプロバイダのAOLとメディア企業のタイム・ワーナーが合併したものの、統合がうまくいかず、企業文化の違いや経営統合の課題に直面しました。この結果、合併後の業績が低迷し、結局両社は再び分離することとなりました。

Hewlett-Packard(HP)とAutonomyの買収(2011年)

IT企業のHPが英国のソフトウェア企業Autonomyを買収したものの、Autonomyの評価に不備があったことが後に明らかになりました。この買収により、HPは巨額の評価減損を余儀なくされ、買収価格の割り引きが行われるなど、多額の損失を被りました。

DaimlerとChryslerの合併(1998年)

自動車メーカーのDaimler-Benz(現在のダイムラーAG)とChryslerが合併したものの、企業文化の違いや経営統合の困難さにより、統合が失敗しました。両社のブランドや戦略が統合できず、合併後の業績が低迷した結果、ダイムラーはChryslerを売却することになりました。

これらは一部のM&A事例であり、M&Aの成功や失敗は企業の戦略、経営統合の手法、市場の状況などによって影響されます。M&Aを成功させるためには、事前の評価と計画、統合の適切な実行、文化の適合性などが重要な要素となります。

まとめ

最後に、クロス・オペレーショングループは、マーケ・営業・カスタマーサクセス・カスタマーサポートのオペレーション構築・効率化を実現し、そのアウトプットを提供しています。

M&Aに向けて、自社のオペレーションを構築したい方や、マニュアル化、型化にお困りの方は、ぜひご相談ください。

この記事を書いた人

Operation事業部

辻川 知週

新卒から5年間、一貫してセールス職を経験。その後、自身で飲食店を創業し、従業員が行う業務のマニュアル化や仕組化をしたことで売上拡大に成功。オペレーショナル・エクセレンスの実現により、身をもってオペレーションの重要性を体感。この成功体験を広めるべく、オペレーション改革の第一線であるクロス・オペレーショングループに入社。週5日ジムに通うほどのトレーニー。

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